A:絶滅寸前のブレーキシステムです
最近のバイクは、車輪にキラキラと銀色に輝く金属製円盤が取り付けられています。これはブレーキディスクといいます。ブレーキディスクはホイールと一緒に回転します。そのディスクをブレーキパッドで挟むことで制動力を得る仕組みを、ディスクブレーキといいます。
ところが、車輪にキラキラ輝く金属製円盤が取り付けておらず、何やら円筒形の部品が取り付けられているバイクもあります。それが、ドラムブレーキ。円筒形の部品(ドラム)の内側にブレーキシューを押し付けることで、制動力を得る仕組みです。ドラムブレーキは低コストで作ることが可能です。バイクにおいては、1970年代頃までは前後輪に広く使われていました。逆に、ディスクブレーキはごく一部の高性能モデルにだけ採用されていたのです。
しかし、ドラムブレーキには、ドラムの内側で制動力を発揮するという機構上、放熱性が低くコントロールしづらいこと、水が入ると乾きにくく制動力が回復しづらいことなどのデメリットが。このことから、スポーツバイクを中心に徐々に前輪がディスクブレーキ化され、やがて後輪がディスクブレーキ化され……と、今や多くのスポーツバイクが前後ディスクブレーキとなっています。
国内4メーカーのウェブサイトに掲載されているスポーツバイクのうち、ドラムブレーキを採用しているモデルを確認したところ、ホンダはゼロ、ヤマハは2モデル(SR400・DS250)、スズキは5モデル(ブルバード400・イントルーダー400・ST250・グラストラッカーシリーズ・バンバン250)、カワサキは2モデル(W800・エストレアシリーズ)。いずれも後輪のみがドラムブレーキで、前輪はすべてディスクブレーキでした(掲載モデルはSR400以外、全て生産終了)。
スポーツバイクの世界ではゆったり走る系モデルの後輪だけに残され、もはや絶滅寸前のドラムブレーキ。ですが、小型スクーターなど小さくて廉価なモデルを中心に、まだまだ活躍しています。
文/高橋 剛