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ポール・マッカートニーのJAZZアルバムが、めちゃCOOLな理由

2018.10.30

 いよいよ今週からポール・マッカートニーの来日公演がスタートする(10月31日・東京ドームほか)。今回のツアーは「フレッシュン・アップ ジャパン・ツアー2018」と題され、5年ぶりのニュー・アルバム『エジプト・ステーション』(ユニバーサルミュージック)をひっさげての来日となる。当然そこでは新作からのレパートリーが演奏されるはずだが、これまでの来日公演のセットリストを見れば、今回も多くのビートルス・ナンバーが演奏される。今回のステージについて、ポールは世界じゅうに向けてメッセージを発表しているが、どの会場に対しても「一緒にパーティしよう!」としめくくられている。コンサートはきっとHOTでエキサイティングなものになるはずだ。

 さて、ライヴの後はその興奮をどう静めるか。ビートルズを聴く? いや、コンサートで聴いたばかりなのだから、同じ曲ではせっかくのコンサートの記憶が台無しだ。何も聴かない? でもやっぱり音楽を聴いて「ポールの気分」に浸っていたいところ。要するに心地よくクールダウンしたいということなのだが、それに最適なアルバムがある。それはポールのジャズ・ヴォーカル。

 収録アルバムは2012年リリースの『キス・オン・ザ・ボトム』(ユニバーサルミュージック)。この「気分」とは「個性」のこと。ポールの歌、演奏、楽曲はいつの時代も素晴らしいが、真ん中にあるのはポールの「個性」。ジャズという音楽は、多くは他人の曲を歌う。多くの人が歌う「名曲」を自分の「個性」で染め上げて、「自分の歌」として歌うのがジャズ・ヴォーカル。シンガー・ソングライターであるポールの場合、個性は歌と一体化しているものではあるが、ジャズを歌うときには楽曲や演奏から離れた、ポールならではの個性が浮かび上がってくるのだ。

 このアルバムは、ハリウッドのキャピトル・スタジオで録音された。この歴史あるスタジオでは、かつてフランク・シナトラはじめ、名だたるジャズ・ヴォーカリストたちが名唱を録音したことで知られている。しかもなんとこの録音で使われたヴォーカル・マイクは、ナット・キング・コールが使っていたものなのだ。さらにポールはキング・コールの看板曲のひとつ「イッツ・オンリー・ア・ペーパー・ムーン」まで歌っている。これはまさにポールの「ジャズ・ヴォーカリスト宣言」というべきもの。ほかにも(ポールは、有名ではない曲を選んだということだが)「バイ・バイ・ブラックバード」「手紙でも書こう」など、ジャズ・ファンにはよく知られたスタンダード名曲がいくつも収録されている。もともと、ビートルズ以前に家族や親戚と歌っていた自身のルーツを歌うところがアルバム企画の発端というが、意外なことにポールはこういったスタンダードがビートルズにも影響を及ぼしていると語る。つまりポールの音楽の歴史全部がここにあるということ。また、ここではアレンジもバックも腕利きのジャズマンたちに任せており、ポールにしては珍しくヴォーカルに徹していることもその印象を強くする。まさにポールの個性が凝縮されているという内容なのだ。

 ジャズに馴染みがなくとも、そこからは強烈にポールの個性が感じられるはずだ。これならばコンサートの余韻に浸りつつ、ポールの魅力を今一度確認しながら心地よくクールダウンできることだろう。

 その次のもう1枚には、CDつきジャズ・マガジン『JAZZ絶対名曲コレクション』の第2号「ビートルズ・ジャズ」がオススメ。こちらはポールとは逆の、ビートルズ名曲のジャズ・アレンジ集。ジャズマンたちの個性的な演奏が、ビートルズの楽曲の魅力を浮き彫りにしている。ポールはビートルズ楽曲をジャズにアレンジすることはなかったが、「ジャズマン」ポールが歌っていたらどんな音楽になったかこれを聴きながら想像するのも楽しい。

ポール・マッカートニー『キス・オン・ザ・ボトム』(ユニバーサルミュージック)

隔週刊CDつきジャズ・マガジン『JAZZ絶対名曲コレクション』第2号「ビートルズ・ジャズ」

文/編集部

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