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2018.10.12

イギリス人が驚いた日本のテレビの自主規制体質

■連載/Londonトレンド通信

 ロンドンで9月に開催されたオープンシティードキュメンタリーフェスティバルで日本の鬼才、原一男監督の特集が組まれた。作品もさることながら、代表作『ゆきゆきて、神軍』(1987年公開)上映後のQ&Aで明かされた日本のテレビ事情が、イギリスの観客には驚きだったようだ。

衝撃をもって迎えられた『ゆきゆきて、神軍』

 『ゆきゆきて、神軍』は、車のバッテリーを商う一方、個人で街宣車を乗り回す奥崎謙三が、自身も所属していたニューギニア部隊で行われた隊員処刑の真相追及のため、上官らを訪ねる道行を追ったドキュメンタリー。

 特異な人物、奥崎謙三のまさにその特異性の真骨頂をとらえた人物ドキュメンタリーであり、戦争の貴重な証言集でもある。古くは市川崑監督、最近では塚本晋也監督が映画化した大岡昇平の小説『野火』に描かれたものと同様の飢えた兵士によるカニバリズムが、実際に体験した元兵士の口から徐々に明かされていく。

 国内外で映画賞多数を受賞、また、英国映画協会が出版している映画誌『サイト・アンド・サウンド』2014年9月号の『50グレーテスト・ドキュメンタリーズ・オブ・オール・タイムス』で23位、日本からは唯一入った秀作だ。

 上映前の挨拶で原監督が「古い映画も初めて観る人にとっては新しい映画」と言った通り、『ゆきゆきて、神軍』は衝撃をもって迎えられた。

 上映後のQ&Aも活発なものとなり、あっという間に予定された30分を回ってしまった。

 司会者からのラストコール「さくっとした質問ならあと一つ」にいち早く手をあげ、ラストワンに選ばれた年若い女性の質問は、「30年以上も前に撮ったとおっしゃいましたが、今の状況とも関連しています。日本の政府、社会は、戦争中に起こったことの裁定に囚われているようです。このドキュメンタリーが人々の意見を変えた点はありますか。また、現代の映画制作者はどのようにそれをとらえていますか」というもの。

「質問をありがとう。でも、それはさくっとした質問ではないです」と渋い顔の司会者だったが、原監督が「政府に影響を与えたということは全くないと思います」とさくっと答えたことに「冗談でしょ?」と唖然。

 処刑の違法性がここまで明らかになったからには、調査は個人の手を離れ、公のものになったと思うのは当然だ。だが、そうはなっていないらしい。

 原監督は、「私たちの映画はタブーを壊すという問題意識があって、テレビは何よりもそのタブーを怖がるので、これなんて絶対テレビでは放送しません」と応じた。

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