
上司に「で、何が言いたいの?」と言われた、言いたいことがうまく伝えられない――。長時間労働削減に取り組む、“時間のない”一般企業おいては、よく起きることではないだろうか。ビジネスパーソンたちは、少しでも簡潔にものごとを相手に伝える力が必要になってきている。そこで今回は、90秒で相手に伝えるポイントを教えている研修講師に、そのコツを聞いた。
90秒以内に話す必要性
元NHKキャスターで現WACHIKA(話す力)代表の阿隅 和美氏は、「90秒で話す」ことを研修などで教えている。現場でそこまで端的に伝える必要性のない社員もいるかもしれない。なぜ90秒以内など短時間で話せるほうがいいのか。
●今の時代、現場では誰もが求められている
「働き方改革、残業時間削減、生産性向上、効率化など、現場では、とにかく忙しいビジネスパーソンが増加中。仕事が集中する人や、役員クラスなど役職が高い方ほど、無意味な長話を嫌い、必要な情報を簡潔に伝えて欲しいという要望を持っています。この『伝え方』への期待に応えなければ、せっかくの価値ある情報であっても認めてもらえず、ビジネスパーソンへの評価が下がってしまいます」
●スマートフォンによる人の集中力の低下
「現代ビジネスパーソンは、スマートフォンでニュース記事を読む習慣がついています。見出しは、約15文字前後、それを見て、一瞬で自分に必要かどうか、判断する癖がついていませんか? ビジネス現場では、人の話をじっくり聞く『時間』と『集中力』を持たない人が増加してきているのです」
●90秒あれば要点を伝えられる
「例えばテレビのニュースは、複雑な内容を秒単位でまとめて伝えています。季節ネタなら15秒ニュースでまとめて伝えます。60秒、90秒あればニュースを5W1Hなど、要点をまとめて伝えることが可能です。つまりビジネスシーンでは、必ず90秒以内で伝えなければいけない、というわけではなく90秒あれば、だいたいの物事を整理して、要点を伝えることが可能であるということです」
90秒で忙しい上司に必要なことを話すコツ
そこで阿隅氏に、90秒で忙しい上司に必要なことを話して、上司を次の行動へと促すためのコツを教えてもらった。次の5ステップで話すといいという。
1.上司目線で考えて話を構成する
「上司の役割と立場を意識して、何を聴きたいのか優先順位を考えて話を構成します。上司がその話を聴く理由をしっかり伝えることです」
2.何について話すのかを始めに伝える
「いきなり話し始める人がいますが、何の話なのかさっぱりわかりません。自分と相手の前提条件が違うので、まずは聴く態勢を作るためにも、何について話すのかを先に伝えてください」
3.上司の判断材料を正確に伝える
「5W1H(3H*)で伝えます。ここでは事実だけを伝えてください」
*3H:How(どのように)、How many(どのくらい)、How much(いくら)
4.簡潔になるように、一文を短く
「とにかく一文を短く。だらだらと長い文章は聞きにくいです。『ですから』『そのため』『結論として』など、つなぎの言葉を活用して、前後の関連性を明確にすると分かりやすくなります」
5.自分の見解を伝える
「上司に『で、何が言いたいの』『で、君はどうしたいの』と言われないために、最後に自分の見解を伝えます」