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2018.08.03

ロシアW杯ベスト16進出へ導いた「ゆとり調整」

Photo:GETTYIMAGES

■連載/元川悦子「ロシア戦記」

 フランスの20年ぶり2度目の優勝で幕を閉じた2018年ロシアワールドカップから半月。同大会でベスト16入りを果たした日本代表は4年後の2022年カタール大会に向けて、森保一監督が新たに就任。2020年東京五輪を目指すU-2121歳以下)とA代表の2つのチームを掛け持ちしながら、世代交代を進めていくことになった。

 20歳前後の東京世代には堂安律(フローニンゲン)や安倍裕葵(鹿島)ら期待のタレントがいるものの、すぐに彼らをA代表の軸に据えることはできない。ロシアを戦った吉田麻也(サウサンプトン)や香川真司(ドルトムント)ら20代後半のメンバーを軸に据えながら徐々に若い世代を組み込み、指揮官の言う「世代間融合」を図っていく形になると見られる。

「ジャパンズウェイ」とは何か?

 そんな日本代表だが、強化を進める前にロシア大会の検証を忘れてはいけない。先月26日の森保監督就任会見直前に、日本サッカー協会の田嶋幸三会長と関塚隆技術委員長が映像を使いながら簡単なワールドカップの振り返りを行ったのだが、そこで改めて強調されたのが「Japan's Way(ジャパンズウェイ)」だった。

「日本に足りないものを高める努力をしつつも、世界基準よりも勝っていくべき日本人のストロングポイントをさらに伸ばしていくべき」というのが、協会側の一貫した主張であった。4月に解任されたヴァイッド・ハリルホジッチ元監督が日本人に足りない「デュエル(局面での戦い)」を強調しすぎて思うように成果が出なかったこと、日本人の西野朗前監督が日本人の一体感を大事にして前評判の低さを覆したことなどを踏まえたのか、やたらに「ジャパンズウェイ」が繰り返されていた。「この考え方は2006年からあった」という田嶋会長の説明には戸惑いを覚える関係者も少なくなかったが、Jリーグ発足から25年が経過し、ワールドカップに6回連続で出ている日本サッカー界の経験値を最大限生かすべき時期に来ているのは確かだろう。

ベスト16進出へ導いた「ゆとり調整」

 ロシアでも過去の反省を踏まえて成功につなげた部分があった。1つは直前合宿のコンディション調整だ。西野ジャパンは5月21日から千葉県内で国内合宿をスタートさせ、30日のガーナ戦(日産)を経て、31日に最終登録メンバー23人を決定。6月2日に日本を発ち、同日夜に直前合宿地のオーストリア・ゼーフェルト入り。3~6日まで本格的な練習を行って、7日にスイス・ルガーノへ移動し、8日にスイスとの親善試合を消化した。翌9日はゼーフェルト移動のみで全体練習はオフとなり、10日からゼーフェルトでトレーニングを再開。11日にインスブルックへ移動して12日にパラグアイとの親善試合を実施。13日にゼーフェルトを発ってベースキャンプ地・カザンへ移動した。そこから19日の初戦・コロンビア戦(サランスク)まではカザンでの調整という流れだった。

 初戦までの調整時間は約4週間あったのだが、日本代表が2部練習をこなしたのは、6月4日の1回だけ。しかも5月31日と6月1日、6月9日、13日と4日もオフを取っている。98年フランス大会初参戦以降、「事前合宿は休みなしの2部練習で追い込んで、本大会を戦い抜ける基礎体力を養うのが基本」という考え方がベースだったため、今回の「ゆとり調整」は異例中の異例だった。

「休めば休んだで『何で休むのか』といろいろ批判も多かったと思うんですけどね」と7月2日のベルギー戦(ロストフ)後に西野監督も苦笑していたが、確かに「こんなに練習の負荷が軽くて大丈夫なのか?」という疑問の声はあった。

 実際、2014年ブラジル大会を率いたアルベルト・ザッケローニ監督(現UAE代表)は鹿児島県指宿市での国内合宿で連日ハードな走り込みをしていたし、ハリル監督も20152017年の3年間はシーズン終了直後の欧州組だけ集めて負荷の高いフィジカル強化を行うのが常だった。こうした例があったから、不安の声が出るのも不思議はなかった。しかしながら、外国人スタッフのアプローチが必ずしもうまくいったわけではなかった。ブラジルでの日本代表は香川筆頭に走行距離が激減。多くの主力がコンディションを落とした。ハリル体制でも2015年には清武弘嗣(C大阪)、2016年には本田圭佑(パチューカ)と香川が揃って負傷と、ケガ人が続出する結果となった。

 こうした状況を問題視したとされる早川直樹コンディショニングコーチが、岡田武史監督(現FC今治代表)体制で挑んだ2010年南アフリカワールドカップ時にも採用したハートレートモニターを使ったデータ計測(YOYOテストなど)とその数字を基にした負荷調整を提案。西野前監督も全面的に早川コーチを信頼して全てを委ねた結果、今回の「ゆとり調整」になったという。

 ロシア大会メンバーは23人中15人が海外組。シーズン終了直後で疲労がピークに達していたこともあり、彼らに大きな負荷をかけるわけにはいかなかったという事情もあるだろう。海外組が4人だった南アの時はシーズンが始まったばかりの国内組に合わせてもう少し練習回数を増やしていたが、8年前と今とでは事情が違う。そういう要素も加味しながら、データ計測を重んじたのである。

 それがロシアでは奏功し、選手たちの走力は最後まで落ちなかった。特に香川は6月28日の第3戦・ポーランド戦(ボルゴグラード)で1試合休息を与えられたプラス効果もあって、過酷だったベルギー戦で両チーム最高の12.047㎞の走行距離を記録。長友佑都(ガラタサライ)や原口元気(ハノーファー)は毎試合50回前後のスプリントを見せるなど、全員が凄まじい走りで相手に迫った。コンディション調整1つとっても科学的アプローチは必要不可欠だ。そのことを再認識した日本サッカー界は森保体制になっても今回の成功例を引き継ぐ必要がある。

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