小学館IDをお持ちの方はこちらから
ログイン
初めてご利用の方
小学館IDにご登録いただくと限定イベントへの参加や読者プレゼントにお申し込み頂くことができます。また、定期にメールマガジンでお気に入りジャンルの最新情報をお届け致します。
新規登録
人気のタグ
おすすめのサイト
企業ニュース

入社5年目社員の本音「水際で密輸を取り締まる仕事に憧れて…」東京税関・熊田みずえさん

2018.08.02

何より大切な毅然とした態度

どういうものが一般の旅行者の持ち物なのか。ふつうの旅行者を知るためにも、私は検査ブースである程度、入国者にお願いをして旅行バッグを開いてもらいました。到着便の多い朝は検査ブースで入国者のバッグを開くと、お客さんの列ができることもあります。

「急いでいるんですけど……」「何もないことを確認させていただきたいので、ちょっと見せていただけませんか」学生時代は相手にどう思われるかを気にして、キツイ言葉は口にできなかった私ですが、自分が検査をしようと決めたお客さんに対しては、毅然としてお願いする態度を心掛けました。

高圧的な人との対応は経験がありませんが、「なぜ開けなきゃいけないんだ!?」とか、強く言い返してくるお客さんには、チームの先輩が駆け寄ってくれます。一人で対応することはありません。

手荷物の中に輸入禁止のものはないか、また、免税範囲を超える物品がないか申告を促します。多かったのはタバコの申告ですね。国内に居住している方なら、紙巻きタバコの免税範囲は日本製1カートン、外国製も1カートンまで。免税範囲を超えた分は、その場で税金を計算し提示をして、「空港内の銀行で納めてください」と、税金の納付をお願いします。

ある時、明らかにふつうの旅行者より多い荷物を、持ち込もうとする中年の女性がいまして。スーツケースを開くと、ブランド品がザクザクと出てきた。バッグやアクセサー等のお土産も、20万円を超えると税金がかかります。税関の研修ではブランド品の勉強もしましたし、現場での経験でタバコにも詳しくなりました。

「悪いことをしようとする人間は、どこの検査ブースが抜けやすいか見ているんだぞ」それは空港内の税関で長年働く、挙動不審者を見分ける目を持った先輩の言葉でした。制服に身を包み税関の検査ブースに立ちますが、新人に見られないよう背筋を伸ばして。悪質な密輸人は絶対に私の前を通って入国させない。そんな気構えが通じたのでしょうか。麻薬等、社会の安全を脅かすものを、密輸しようとする不審者との遭遇はありませんでしたが(笑)。

この業務に長く携わり、これまで数多くの不審者を見抜いてきた先輩は、覚せい剤を飲み込んだまま、税関を通過しようとした入国者を摘発した事案がありました。またある時は、外国人女性のスーツケースが妙に不自然だとベテランの男性職員が直感を働かせた。

覚せい剤の密輸が発覚すると、空港内はあわただしくなります。当事者が女性の場合、女性職員が立ち会うことになっていて。この時は私が個室で立ち会い、通訳の人が来るまで、スーツケースを日本に持ち込んだ経過を片言の英語で聞き取りました。

「ワタシ、ダレニモ頼マレテイマセン」白人の女性はそう繰り返していましたが。二重底になったスーツケースを解体すると……、透明な袋に入った、ジャリジャリした覚醒剤がワッーと出てきた。

本当にこういうことってあるんだ……。今更ながら自分の職務の重要性を意識した出来事でした。

成田国際空港での水際での密輸の取締りには、誰もが納得する税関職員の使命感を感じるが、輸入者の元を訪れ、関税等の適正・公平を促す事後調査の仕事は、人間臭い仕事である。税金の徴収を促す仕事の中で、熊田さんが時に逡巡する姿は後編で。

取材・文/根岸康雄
http://根岸康雄.yokohama


@DIME公式通販人気ランキング


興味のあるジャンルを登録して@DIMEをもっと便利に!Amazonギフト券が当たるキャンペーン実施中

@DIMEのSNSアカウントをフォローしよう!

DIME最新号

最新号
2023年3月16日(木) 発売

DIME最新号の特別付録は「5インチ電子メモパッド付き計算機」、特集は「ミニマルライフ&ギア」

人気のタグ

おすすめのサイト

ページトップへ

ABJマークは、この電子書店・電子書籍配信サービスが、著作権者からコンテンツ使用許諾を得た正規版配信サービスであることを示す登録商標(登録番号 10401024号)です。詳しくは[ABJマーク]または[電子出版制作・流通協議会]で検索してください。