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社会人6年目の本音「役に立ちたいと思ってもやれることに限界はある」横浜市役所・磯田絵理香さん

2018.07.11

自ずと限界、その中でも広い視野で

 鶴見区は外国人も多い。窓口を訪れた中にはマダガスカルとか、初めて出会う国籍の方もいました。一番困った経験ではベトナムから来た若い人で、日本語はもちろん、英語もできない。果たして身振り手振りで大切なことが伝わったのか。大切なことは必ず伝えなければいけませんから。“病院、病気、怪我”と紙にローマ字で書いて。病院で保険証を見せると、3割負担で医療が受けられることは絶対に伝えたかったので、“30%!”と、大きく紙に書き加えました。
「とにかく困ったらこの窓口に来て!」と、最後に多分、日本語で声を張り上げたかもしれません。

 窓口には母子家庭のお母さんも来られます。その中には国民健康保険制度自体を知らない方もいました。「保険証をこれまで持ったことがありますか」「お医者さんにかかる費用が、3割ですむんですよ。子供さんも安心して病院に行けます」

 それでも医療費の負担が苦しい。生活保護の申請が受理されますと、基本的な医療費は免除になりますが、それにはいろいろな条件があり、生活保護を受けられない事情のある方もいます。国民健康保険の医療制度自体、ほころびが目立つところも感じました。窓口に来られる方は本当にいろんな事情を抱えています。

 私は横浜市の職員として、お役に立ちたいと思っていても、おのずとやれることには限界があるわけで…。困っている方に対して、なんとかしてあげたいと思っても、それができない時もあって。そんな思いが募った時はモチベーションが下がりましたね。

「確かに制度上はそうであっても、何でこういう決まりになっているのか、理解できません」ある時、上司にそう相談したことがあります。すると、

「私も同じ疑問を持つことがあるよ」上司も率直な気持ちを吐露してくれました。「でも、長い歴史があって、日本が誇れる国民皆保険を維持し、今に至っているんだ」と。

 窓口業務に慣れて視野が広がっていくと、私個人で制度は変えられませんが、窓口での伝え方の質は変えることができると気づいていきました。区役所のいろんな部署の人と知り合い、話を聞いているうちに、制度はつながりを持っていることがわかってきて。窓口の担当になって最初は、国民健康保険の制度のことしか話ができませんでしたが、高齢者は介護保険制度も必要な時があります。

 高齢者で介護保険の適用が必要な方には、その手続きをメモに記して、「あの窓口で介護認定についての申請もしてください」と、お願いをします。母子家庭等で経済的に苦しい方には「母子家庭の方を援助する制度があります」と、その制度をご案内したり。

 亡くなられた方の場合は保険証の解約や、親族の方がいろんな手続きをしなければなりません。他の窓口で使っていた死亡手続きのチェックリストをもらってきて、「これも一緒に確認してください」と手渡したり。窓口を訪れた方がたらい回しにならないよう、できるだけスムーズに事務手続きができるようにして、お客様の満足度を出来る限り高める試みをしました。

 そんなある日のことでした。精神疾患を抱え、家族もいない、健康保険の仕組みも受けられる医療制度もわからないという中年の女性の方が、私が担当する鶴見区役所の国民健康保険の窓口を訪ねてこられました。

“意味のあることをやりたい”と公務員になった磯田さん、区役所の国民健康保険科の窓口で、これまでの人生で出会ったことのない人々と触れ合った彼女は、いったいどんな“意味のあること”を学んだのだろうか。

 区役所から一転、オリンピック・パラリンピック推進課に異動した磯田さん。少なからず社会の歪みを背景に抱えた市民を含め、一公務員としてオリンピック・パラリンピックをどう行政に生かしていこうと感じているのか。

 それは後編で。

取材・文/根岸康雄
http://根岸康雄.yokohama

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