『オシャレの新事実に驚愕できるもつ焼き屋』
「あ〜もう、なんだっけ!!」
こんな会話が30秒以上続いたが、もうあきらめた! “あいうえお”の五十音を“あ”から全部思い出し、アレでもないコレでもないとしらみ潰しに思い出す方式を試みようとも思ったが、それでも思い出せる可能性は10パーセントくらいだし、最初の文字が濁音とか半濁音とかだと取りこぼす可能性が異様に高い!
そんなことでオヤジがダラダラ悩むより、もうとにかく今は呑ませてと、サワーのソトを焼酎のジョッキに注ぐ前に、ライムの皮を下にしてギュッと絞ってからジョッキに投入。その後にミントを入れてグッチャグチャにステアしてから、サワーを注いで軽く混ぜ、ちょうど焼きあがったもつ焼きと呑む。
お〜シャレてるだけじゃなくて、もつとも合う! モツの脂とミントの清涼感の対比が素晴らしい!
そういやこの店、モツ焼き屋には珍しく女性客やカップルも多い。店内は至って普通だけど、この飲み物みたいなちょっとした所がオシャレ心を刺激するのか? これぞオシャレ人間が集まる店か?
そう思ってもう一度店内をよく見る……驚いた!! 店内の男性客の半分以上が丸坊主もしくは五分刈り以下の超短髪!
そして、そんな超短髪の男性がみなさんがヤケにシャレてファッショナブルである。なんつうんでしょう、アーチストチックっていうんでしょうか? この店は目黒区なんだけど、目黒区のオシャレは坊主ってことなのか!? そういうことか?
そんなオシャレの現実に驚愕してたら、ふと思い出した。さっきの話。あれ、モヒートね。
「そうそうモヒート!!」
さっきあれほど悩んだネタだったのに、いざ答えが出てくると、モヒートに関する会話は、T氏がいった、この『そうそうモヒート』の一言で終わってしまった。
オヤジはカタカナの名前がなかなか出てこないのと同じように、カタカナに関する会話も苦手なのだ。
オヤジ二人でその後2軒ほどハシゴ。そしてT氏と分かれて帰ろうと目黒線に乗ったつもりが、間違って大井町線に乗ってしまい、気づけば家とはちょいと離れた尾山台の駅。すぐ引き換えそうと思ったが、ついつい街に降りてしまい、駅前のスナックに入店。この日の数日前に亡くなった秀樹を偲んでカラオケを歌った。
『傷だらけのローラ』『薔薇の鎖』といった有名どころ、そして秀樹パッションの最高傑作『ジャガー』! 著作権の問題で、ここに歌詞は書けないけれど暇があったら調べてほしい『ジャガー』の歌詞。
秀樹の歌には明るいモヒートみたいな曲も多いけれど、知れば知るほどスナックの焼酎ロックのように魂に染てくる。
文/カーツさとう
コラムニスト。グルメ、旅、エアライン、サブカル、サウナ、ネコ、釣りなど幅広いジャンルに精通しており、新聞、雑誌、ラジオなどで活躍中。独特の文体でファンも多い。