
■連載/阿部純子のトレンド探検隊
◆国民食の「カレーライス」に迫るナン派の台頭
カレーにたずさわる企業や団体、飲食店が共同で立ち上げた「カレーはナン派VSライス派プロジェクト」が6月1日に発足した。このプロジェクトはカレーに合わせるのはナンか、ライスかを切り口とした議論で、日本のカレー業界を盛り上げようという企画。プロジェクト発足を記念してプロジェクトメンバーのカレー大學が主催するシンポジウムが開催された。
2018年は神田川石材商工がナンを焼く「タンドール窯」を日本で製造販売して50年を迎える記念の年。1968年に同社の2代目社長の高橋重雄さんが“思いつき”でタンドール窯を作ってから、どのようにして日本にナンが普及していったか、現社長である竹田伴康さんがユーモアを交えつつ語った。続いてカレー大學の学長である井上岳久さんが、カレーにおけるナンとライスの基礎知識を伝授。
ナンは精製した小麦粉を自然種の菌を使って発酵、薄く伸ばしてタンドールと呼ばれる窯で400~500度で蒸し焼きにするインド式のパン。インドではタンドールで焼かないとナンとは呼ばず、タンドールがあるのはレストランやホテルなどで、外食で食べるのがナン、家庭で焼いて食べるのは全粒粉を使ったチャパティと分けているとのこと。しかし最近では、卓上のナン焼き器も登場しているという。
ナンが食べられているのは小麦粉文化圏の北インドであり、粘性が高く、乳脂肪分が入った甘みとコクがある北インドのカレーにつけて食べる。日本では2000年頃からインド料理店でナンが定番化していったが、日本にあるインド料理店は北インド料理が多いためナンがよく食べられるようになった。
一方、南インドは米文化でカレーに合わせるのはインディカ米を使ったライス。ごはんにしみ込むような、粘性が少ないさらっとしたカレーと合わせ手づかみで食べる。南インドは赤道に近い暑い地域でもあり、スパイスが効いた辛めの味が多い。
南インドのカレーがヨーロッパ経由で日本に入り、小麦粉を使ったルーで作るとろりととした欧風カレーを白飯に合わせて食べるようになり、日本では国民食と言われるほど「カレーライス」が普及した。
「カレーは大量に煮込んで作って簡単に配膳ができ、栄養バランスもいいので戦前は軍隊食として盛んに使われた。戦後は日本人が好きなごはんに合うものとしてカレー商品が開発され、給食や外食、家庭で広く普及していった」(井上さん)
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