
■実は深い歴史のあるスペシャルティコーヒー
米国では1950年代から、低価格・低品質のブレンドコーヒーが市場を席巻し、それに対するアンチテーゼとして、1966年に「スペシャルティコーヒー」という言葉が生まれた。それが意味するものはやや曖昧だが、大雑把に言えば「ラテンアメリカ、アフリカ、アジアの地元農家が伝統的農法で特別に手をかけて育てる、選び抜かれた匠のコーヒー」となる。
「スペシャルティコーヒー」を旗印に、コーヒーの本当の美味しさを世間に広めようと多くの企業家がカフェ業界に進出した。これを、(格安コーヒーが普及した「ファーストウェーブ」に対し)「セカンドウェーブ」と呼び、その代表格がスターバックスであり、タリーズコーヒーである。
その後に勃興した「サードウェーブ」は、巨大になりすぎたスターバックスへ対抗するように生まれた小事業家たち。自らコーヒー農園に足を運んで素材を厳選し、時には品種改良に手を貸す、こだわりの職人魂を持つ人たちである。
「サードウェーブ」が牽引役となり、大小様々なコーヒー事業者が競争する中、スペシャルティコーヒーへのニーズは増大。コーヒー消費量でスペシャルティコーヒーが占める割合は約6割に及んでいる……もっとも、これは米国の話。日本ではスペシャルティコーヒーの消費量は、コーヒー全体の1割程度でまだマイナーな存在だ。ただ、この割合は少しずつアップしており、「サードウェーブ」の旗手ブルーボトルコーヒーの日本進出などの要因もあって、近い将来ブームとして人気が炸裂するかもしれない。
■実際の話、スペシャルティコーヒーとはどんなもの?
それにしても「スペシャルティコーヒー」とは、普通のコーヒーと比べ、淹れ方や風味の点でどんな違いがあるのだろうか。筆者の地元、函館にあるカフェ「BOOK CAFE irodori(イロドリ)」を訪れ、オーナーの吉田麻子さんに淹れるところを見せてもらった。
このカフェでは、通常のコーヒーとスペシャルティコーヒーとでは、使用する道具が全く異なり、後者に用いられるのは「フレンチプレス」という抽出器具。細身のガラス製本体に、所要量の焙煎豆を投入するところから始まる。
次いで、ケトルで最適の温度にした湯を注ぎ入れる(合間に少し撹拌)。