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2018.05.17

多摩動物公園園長が語る飼育員の生き方「私の後頭部を蹴った意外な犯人」

【動物園を100倍楽しむ方法】第二回 多摩動物公園園長が語る飼育員の生き方 前編

 多摩動物公園園長の永井清さん(61才)。動物園一筋の人生である。永井園長に質問をしたいことはたくさんあった。これまでに園長が触れ合った動物たちのこと。現場の飼育員だった園長が語る動物の飼育員気質について。生き物の誕生と死についてのこと。動物の展示方法、来園者の目をひく目玉動物について。そして今年開園60周年を迎えた多摩動物公園の楽しみ方――。

「私よりも長年、飼育員をしている職員の方が面白い話が聞けるでしょうけど、まあ、お座りください」
体の大きな永井園長は、園長室の応接セットのソファーに腰を深く落とし、時より頭に手を置き語り続けた。園長の静かな口調の端々から垣間見えるのは、生き物の繁殖と飼育について、一飼育員と変わらぬ思いであった。

■いきなり蹴られて「だ、誰だ!」

私は生き物を飼うことよりも、増やすほうに興味がありました。子供の頃はメダカでも尻ビレをよく観察して、オスとメスを見分けて飼いました。中学の時はハツカネズミを20〜30匹ほど増やしてしまい、家族のヒンシュクをかったもんです。
新人の頃、多摩動物公園に挨拶に行った時に、「キミは何が好きなんだい?」と、当時の係長に聞かれて「繁殖が好きです」と私が答えると、不思議な顔をされたのを覚えています。係長はゴリラとかライオン、キリンとか、動物の名前を答えると思ったのでしょう。

今は指定管理者の東京動物園協会に応募し、飼育員に採用されるわけですが、私の頃は東京都庁の公園緑地部が動物園を運営していました。飼育員志望の私は都庁の畜産職の職員として採用され、上野動物園の飼育課に配属されました。

初めて担当したのは鳥の飼育です。卵から孵っているかな、育雛箱のヒナが元気かなと、新人の頃は出勤して毎朝、孵卵器や育雛箱を覗く時はドキドキしたものです。

当時、上野動物園は絶滅寸前だったトキの育雛技術に関わっていて、最後の日本産のトキのキンが飼育されていた佐渡島に、何回か出張したのもいい思い出ですが。野生動物の凄みを思い知らされたのは、上野動物園のケージで飼育していたフクロウでした。

繁殖に興味があった私は、卵が孵化する時の最適な温度を調べようと、フクロウが産んだ卵の中に鶏の卵を紛れ込ませたんです。フクロウに抱かせた鶏の卵をサッと取り上げ、卵の中心の温度を計測器で調べ、統計を取っていた。そんなある日のことです。いつものように巣の中の鶏の卵を取り上げ、フクロウがいるケージから出ようとしたら、ガーンといきなり後頭部を思い切り蹴られて。
「痛っ、だ、誰だ!」振り返ると……、音もなく飛んできたフクロウの仕業でした。血が出ましたよ。野生動物には慎重に接しなければと、改めて痛感した出来事でした。

職員は試験制度があって、ステップアップしていくのですが、飼育員の中には異動したくない、ずっと現場にいたいと、あえて昇進のための試験を受けない人もいます。大型の動物を20年以上担当している飼育員も珍しくない。大型の哺乳類には相性がありまして、ゾウ、ゴリラ、チンパンジー等々の飼育員は、動物からも選ばれているような面もあるように思います。

私の場合、動物との相性が悪かったという自覚はありませんが(笑)、鳥の飼育を5年ほど担当すると、事務職に回りました。担当したのは上野動物園の動物の生死を記録する個体管理、今はブリーディングローンといって、繁殖のために動物園同士で、動物の貸し借りをするやり方が主流ですが、当時は動物商からの購入が頻繁にありました。慣れないタイプライターを打ち、外国の動物商と交渉をしたりもしましたね。

30代の初めの頃は農林水産部畜産課の職員として、東京都の特産のブタの普及と促進に取り組み、八丈島に定期的に通い、牧場の整備等を担当したんですよ。事務職として初めて多摩動物公園に赴任したのは30代半ば、坂が多くて敷地が広く、公園という名にピッタリの動物園だと感じました。

地方の動物園では檻越しに展示した動物を見学する形が多いのですが、それはかつての上野動物園を模したもので。今は「ゴリラ・トラのすむ森」や「ゾウのすむ森」等、上野動物園も整備されましたが、私が新人の頃は檻に猛獣を入れての展示が多かった。

ところが上野動物園の約4倍の広さの多摩動物公園は、開園当時から無柵放養式展示といって、檻や柵等の遮断物を使わず、動物を直接鑑賞できるように展示しています。動物を見学するだけではなく、その動物がどんな環境で生活をしているか、動物園は環境学習の場でもあるというコンセプトは開園当時からです。

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