
「ちょっとセクシーな美女を横目に仕事をする」
男の夢である。チアリーディングに応援してもらえるプロ野球選手を筆頭に、圧倒的な勝者ならば叶うだろう。しかし、一般市民にとっては夢のまた夢。こんな余計なことを考えながら、毎日の仕事に励んでいる人も多いだろう。僕もその1人だ。
そんな代わり映えしない日々のなか、知人から1通のメールが届く。
件名「フーターズ・ガールを見ながら仕事をしてみませんか?」
添付されていたPDFを開くと“『HOOTERS』の客席で仕事ができる!”と題名。読み進めると、銀座店の20席をワークスペースとして貸出中。「Wi-Fi付きで30分50円、学生は無料」と書いてあった。こんな低価格で「ちょっとセクシーな美女を横目に仕事をする」という男の夢が叶うなんてっ!
速攻「ちょっと紹介してくれい」と知人に返信。そして、『HOOTERS』銀座店に足を運んだ。
店に入る前に『HOOTERS』のざっくりとした説明をしたい。
『HOOTERS』とは1983年にフロリダで誕生したカジュアルアメリカンダイニング&スポーツバー。日本店は2010年10月に上陸、健康的でセクシーなタンクトップス姿のウェイトレス(フーターズ・ガール)が人気を集めている。
銀座店の入り口は派手なオレンジ色で彩られていた。階段を上がり2階にある店内へ。扉を開いた瞬間、フロリダのカラッとした風が身を包んだ。オレンジ色の天井に取り付けられたシーリングファンが小気味よく周り、大型テレビが映すスポーツ中継、軽快なBGMが流れる。そして「いらっしゃいませ!」と笑顔を振りまくフーターズ・ガール。日本的な影のある色気ではなく、フロリダの太陽みたいな明るいセクシーさ。スポーツ経験者も多いらしく、うっすらと浮かぶ筋肉も美しい。
真正面から端麗な身体を見られたら良いがそうもいかない。「ども、ども、ども」と頭を下げつつ、四肢を眺める。これぞ、ジャパニーズ・忍スタイル。日本人の男が幼稚と言われる理由がここにある。人一倍スケべなくせに、自らのスケベさをユーモアとして体現できない。
口角が上がるのを抑えつつ、フーターズ・ガールに席を案内してもらう。通された席の壁には、『HOOTERS』に訪れたアメリカンセレブの写真がかかっていた。
フーターズ・ガールに囲まれたタイガー・ウッズ、マイケル・ジョーダンが満面の笑顔で写っている。そりゃ、そうなるって。しかし、ビル・ゲイツのみ無表情で。流石、世界一成功したギークだと思う。