
コンパクトカーでも最近は走りにこだわった個性的なスポーツモデルが久しぶりに登場し、人気を集めている。今回は日本とヨーロッパを象徴する最も旬な2台をピックアップ。ワクワクさせてくれる魅力を探ってみた。
クルマを生活の道具や足代わりと割り切って使う人が増えている。一方で、クルマを運転する楽しさを口にする人は減少傾向にある。 しかし、自動車メーカーの開発現場のエンジニアたちは違う。新型車の報道向け試乗会などで彼らと話をすると、SUVやミニバンでもパワーアップや足回りのチューニングに対する情熱がしっかり伝わってくる。まして、今回紹介するクルマのような2BOXハッチバックのコンパクトカーは、「ボーイズレーサー」とか「ホットハッチ」と呼ばれ、スポーツ仕様を造るのが比較的容易なモデルが多く、エンジニアたちの思いがたくさん詰まっているのだ。
◎小さくても作り手の思いがたくさん詰まった傑作
スズキの『スイフトスポーツ』は昨年9月に登場した3代目だ。初代は2005年に発売した新世代『スイフト』をベースに、パワーユニットや足回りをチューン。そもそも『スイフト』は同社が初めてと言ってもいいほど、開発に力を入れ、欧州車に負けないクルマ造りを目指したコンパクトカーで、さらにそこにチューンを施したのだから走りの性能はピカ一だ。
たちまち人気モデルとなり、このクラスの人気車種であるトヨタ『ヴィッツ』のライバルにのしあがった。3代目は新しい基本骨格を手に入れ、エンジン、ミッション(AT)も刷新した。安全装備も最新の技術を導入しスポーツモデルとしての完成度を高めている。
一方、ルノー『トゥインゴGT』は『トゥインゴ』のスポーツモデルとして今年2月に販売が開始されたばかり。このクルマはダイムラー『スマート』との共同開発モデルで、リアエンジン、後輪駆動方式を採用。『GT』は『スマートブラバス』と同じく、ターボを装着している。
この2台の車両本体価格の差は約50万円だが、『スイフトスポーツ』に先進安全装備を付加すると、価格差は40万円弱に縮まる。肝心の走りだが『スイフトスポーツ』は運転しやすく、1.4Lターボはパワー、トルクとも強力で運転を存分に楽しむことができた。『トゥインゴGT』は限られたパワートルクをいかに生かすかが走りの楽しさを味わうポイントになる。両車ともに全高がたっぷりあるので窮屈な感じもしない。いずれもハンドリングのクセもなく、扱いやすさが印象に残る傑作だ。