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「女性の役員・管理職を増やそう」議論の問題点

2018.02.23

Q 一部の大企業では、女性の管理職比率は高いのではないでしょうか?

 化粧品業界や小売業界、流通業界、金融機関などの大企業は15~20年以上も前から女性社員を管理職・役員にするような施策を次々と確実にしてきました。今、これらの企業でも女性管理職の比率は10~40%です。20%を維持することが難しい場合も少なくないのです。

 ただし、こういう企業は大企業全体の中で多数を占めているわけではない、と私は思います。この10~30年、多くの大企業では、女性社員を総合職として雇いながらも、それにふさわしい仕事や昇進・昇格のための道筋をつくることを熱心にはしてこなかったのです。

Q 30~50代の総合職の女性の中から、わずか数年で次々と管理職に昇格させることはできうるものなのでしょうか?

 私が大企業人事部とのコンサルティングやヒアリングを通じて感じることで言えば、30~50代の総合職の女性は、同世代の総合職の男性に比べて、ローパフォーマーが多い傾向があります。人事評価や業瀬・成果などを「優秀:普通・低い」の比率を男性で見ると、「2:6:2」の場合が多い。一方で、女性は「1:3:6」の場合が目立つのです。

 これは、この世代の女性社員の能力が低いからではありません。入社当初は高い人も大勢いたはずなのです。つまり、同世代の総合職の男性と同じ就労意識や労働環境で仕事をする機会や態勢を社会や会社がつくってこなかったからだと思います。彼女たちは、能力を存分に発揮できるきっかけや場が少なかったのです。

 違う見方をすると、こんなずさんな管理下で、「優秀」な部類に入る「1」の女性は抜群に優秀なのでしょう。私は、こういう女性社員を管理職、さらに状況に応じて役員にすることは何ら問題がないと考えています。むしろ、するべきなのです。今のまま、多くの女性社員の中で埋もれるのは、惜しい人材です。

 しかし、「1:3:6」の「3」や「6」の女性社員を、「2020年までに…」ということで強引に管理職にすることには理解ができないものがあります。

 管理職になれば、通常は部下がいます。派遣社員なども多数います。その中でチームを作り、業績を維持し、発展させるのは相当に難しいことです。

 しかも、今は管理職にはプレイング・マネージャーであることが強く求められています。労働時間の規制も進んでいます。限られた時間の中、プレイヤーとして部署で最も高い業績を残し、マネージャーとして部署の管理、部下の育成・指導を確実にできるのでしょうか?

 それでも、優秀である「1」の女性はきっとクリアするのでしょうが、「3:6」の女性はできうるのでしょうか?「できるかどうかわかならないが、とりあえず、管理職にしてみよう」という時代状況ではないと私は思います。

 あるいは、「能力が足りなくとも、男性は管理職になるではないか」という意見もあるのかもしれません。しかし、今、大企業で管理職になるためには、相当に難しいレベルのマネジメントを求められます。20~30年ほど前とは、大きく異なるのです。このあたりの認識が正確にできていないと、深い議論はできないのかもしれませんね。

Q 総合職のあり方も大胆に変えていくべきでしょうね。

 総合職は、一般職や専門職、実務職と求められるものが明らかに違います。それらの境界線は常に明確でないと、人件費の厳格な管理はできないのです。結果として、人件費の管理がずさんになり、厳格な数字に基づくコントロールが十分にできなくなるのです。これでは、企業は強くなりません。

 総合職の定義や位置づけがあいまいという一例を挙げます。大企業では、30~50代の女性社員で総合職でありながら、非管理職として実際は一般職と同じような仕事をしている女性がいます。成果や実績・貢献度も、一般職とさほど変わらない場合があるのです。この女性社員たちの賃金は、仕事の中身や実績、貢献度などに比べ、全般的に高い傾向があります。離職率も概して低い。

 私は、特に大企業では賃金などの面で下方硬直性があり、これが企業の活力を奪っているとかねがね思っています。その一例が、中高年の正社員の賃金が下がってしかるべきなのになかなか下がらないことです。

 女性の管理職・役員を増やそうとする動きがある一方で、大企業の総合職で40~50代の非管理職の女性社員の賃金の高さがそのままになっています。本来は、早急に正しい姿に変えていくべきなのです。まして、この層から女性管理職をこの数年で選ぶならば、私にはますます理解ができないことです。

 どこかでいびつになっているのが、現在の議論なのではないでしょうか?

文/吉田典史

ジャーナリスト。主に経営・社会分野で記事や本を書く。近著に「会社で落ちこぼれる人の口ぐせ 抜群に出世する人の口ぐせ」(KADOKAWA/中経出版)。

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