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なぜ「こたつで水ようかん」は福井の冬の風物詩なのか?

2018.02.11

■福井県の水ようかんは「約A4サイズ」

その種類の多さに驚いている暇はない。福井県の水ようかんは、一般的な長い長方形のようかんや、丸い缶入り水ようかんとは見た目が異なる。通常、約A4サイズで高さ1~2cmほどの箱に入っており、一枚流しの板状となっているのが主流なのだそうだ。そしてその板状の水ようかんを、木べらで切ってすくって皿によそうスタイルで食べるという。

この形状やスタイルは、どのような背景があるのか、古市店長は次のように教えてくれた。

古市店長「一説によると、1950年代当時の町の八百屋さんや、駄菓子屋さんの軒先で、漆の木箱に流して、1枚いくら、もしくは1列すくって5円でお菓子として売られていたことがきっかけとされています。昔は、和菓子は一般的に高級品だったのに対し、水ようかんはコストも味も庶民の駄菓子的な存在だったようです。

1960年代頃より時代の流れに合わせ、生産しやすい紙製に変更になり1970年代には現在の約A4サイズ、高さ1~2センチほどの平らな厚紙の紙箱になりました」

■福井県出身者に聞く!こたつで水ようかんを食べる習慣は本当?

ところで、この福井の「冬にこたつで水ようかん」は、実際、どのくらいポピュラーなのだろうか。古市店長と、福井県越前市(旧武生市)出身のスタッフ伊藤多佳子さんが実体験をもとに教えてくれた。

古市店長「冬場の常備食の一つで、我が家では必ず冷蔵庫に1~2枚入っていました。買う量も多く一度に大判2〜3枚は当たり前で、正月や来客時には5枚くらいをまとめて購入していました。おやつ、食後、風呂上がりなどに、家族でこたつに入りツルッと食べていました。さっぱりしているので一度に食べる量も多くなり、あと一列、あと一列を繰り返しているうちに気が付けば一箱、ということもザラでした。父や私は、その度に母や姉から怒られてましたね」

伊藤さん「こたつでポカポカ温まった身体に、ひんやりとした水ようかんは優しい甘さで、子どもからお年寄りまで箱からすくって食べたものです。エアコンやストーブで温まった部屋でも水ようかんは最高です。福井県内では大きいサイズの箱が主流で、子どもの頃は一枚をひとりで余裕で食べ、家族に怒られていました。福井の水ようかんは皆で囲んで食べることからも『こたつで水ようかん』なのかもしれないですね」

■福井県出身者から見た福井の水ようかんと一般的な水ようかんの違い

福井県出身の人にとって、地元の水ようかんと一般的な水ようかんとではどんな違いがあると捉えているのだろうか。また、福井の水ようかんの魅力も聞いた。

古市店長「付属の木べらですくって食べる”一枚流し”スタイル、黒糖が効いているところ、保存料などを一切使用しないシンプルな作り方かと思います。

福井県民にとっては冬の到来を告げる風物詩であり、冬場の生活に欠かせない重要な食文化のひとつだと思います。寒い冬に冷たい水ようかんを食べるというギャップが、その存在感をより際立たせているのかもしれません」

伊藤さん「私は上京するまでは、水ようかんは冬の食べ物だと思っていました。東京の夏の水ようかんは缶や丸いプラスチック、竹の入れ物などで、福井独特の平たい箱に入った“一枚流し”スタイルがないことに驚いたくらいです。容器の違いはもちろん、スプーンではなく、添付の木べらで短冊状に切った水ようかんをすくい、吸い取るようにツルッと食べる食べ方の違いは、喉越しの良さなどの食感の違いにも表れていると思います。

また冬の寒い外から帰り、こたつで温まった身体に体温より数十度も低い水ようかんを食べることは、身体の奥でより冷たさを感じます。舌だけではなく、この身体の中に染み入る絶妙な感覚が、寒い冬を過ごす福井県民に愛され続けているのではと、今さらながら思っています」

どうやら、みんなで囲んで食べるスタイルや、ツルッと食べる喉越しや冷感が、福井独特の水ようかん文化の魅力といえそうだ。一度、夏とは違うその不思議な味わいを楽しんでみたいものである。

取材協力
ふくい南青山291
https://fukui.291ma.jp/

取材・文/石原亜香利

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