
昨年、第104回を迎えた世界最大の自転車ロードレース「ツール・ド・フランス」(以下ツール)。全21ステージ・総走行距離3540kmで競われた2017年大会は、イギリスのクリス・フルーム(チームスカイ)が3年連続4度目の個人総合優勝に輝いた。
その世界最速の走りを支えたバイクが、イタリア・ピナレロ社の旗艦モデル“ドグマF10”だ。日本の東レが開発した高強度と高弾性という相反する特性を高次元で両立させた新素材「TORAYCA® T1100G」カーボンを使用し、細部のフレームデザインを進化させ、前作ドグマF8から7%の剛性アップと6.3%の軽量化に成功。2018年モデルは日本でもすでに販売が開始されている。
さらにピナレロは、ツール開催中の2017年7月に同本拠地である北イタリア・トレヴィーゾにおいて、ドグマのバージョンアップモデルを続々と発表。とくに注目は、今後拡大が予想されるロード用ディスブレーキを採用した“ドグマF10 DISK”と、ディスブレーキに加えて路面状況によって自動で硬さが変わる電子制御技術が組み込まれたロード用サスペンションを搭載した“ドグマK10-S DISK”だ。
名峠が点在する自転車の聖地・北イタリアにおいて、ドグマF10 DISKのテストライドを敢行。どこよりも早く、その性能についてレポートしよう。
■ディスクブレーキの存在を感じさせない流麗なフォルムが高い空力性能を生み出す“ドグマ F10 DISK”
フレーム素材はドグマ F10と同じ「TORAYCA® T1100G」カーボンを使用。エアロダイナミクスと剛性のバランスに優れるフラットバック輪郭(涙滴断面の後端の尖った部分を切り落とした形状)をしたダウンチューブや、流れるようなカーブを描くトップチューブなど、デザイン性の高さと空力性能を併せ持ったドグマF10をベースに、ロード用油圧式ディスクブレーキを組み込むため、フロント100×12mm・リア142×12mmのスルーアクスル(剛性と強度を高められるホイール固定方式)が採用されている。
テストライドへ走り出す前に、全体のシルエットを見てみると、一般的なロードバイクの美しさを損なわず自然にディスクブレーキが組み込まれている。MTBほどの過度な剛性が必要ないため、ブレーキキャリパー取り付け部分のフレームに厚みを持たせず、ほぼ通常のフレームにそのままキャリパーが装着されている。
フロントに至っては、整流効果を高めるためにフォーク先端部分が後方に流れるような形状をするフォークフラップの上部に沿うように収まり、ほとんど出っ張りを感じない。これは見た目の良さだけでなく、ディスクブレーキ装着部分の空力性能向上も期待できる造りだ。