
テレビCMでさかんに宣伝されている医療保険。保険会社もたくさんあれば、保障内容や特約もさまざまで、一体どれがよいのか迷うほど。
「今は健康でも、いつ何があるかわからない」ということで、医療保険は入っておくべきと考えている人が大多数かもしれない。
ところが、「基本的には民間の医療保険に加入する必要はありません」と、驚きのアドバイスするのが、「保険を売らない異色のファイナンシャルプランナー」として知られる末永健氏(家計の学校S.H.E代表)。
末永氏の近著、『書けばわかる! わが家にピッタリな保険の選び方』(翔泳社)では、以下の二つの大きな理由から、医療保険の加入を勧めていない。
●国の医療保険がある
国民皆保険制度でほとんどの人が加入している、国民健康保険や会社の健康保険。大半の医療費を自己負担3割でまかなえるほかに、高額療養費制度や傷病手当金があるため、結構頼りになる。高額療養費制度とは、1か月あたりの医療費負担額が80,100円を超えた分からは、1%の自己負担で済むというもの。傷病手当金とは、会社の健康保険に加入していれば活用できるもので、病気・ケガで仕事ができない状態になった際に、給料の3分の2が支給される(最長18か月)。
●三大疾病でも入院は約1か月
ガン、脳卒中、心筋梗塞の三大疾病は、いったんかかると長期間の入院となるイメージがあるが、実はそれほどでもない。厚労省の統計によれば、ガンでの平均入院日数は約3週間、働き盛り世代(35~64歳)の脳卒中では46.9日、心筋梗塞では2週間程度。一方、民間の医療保険のなかには、120日保障とか通算1000日保障というものまであるが、これは非現実的といえる。
実例として、会社勤めのAさんが、くも膜下出血で開頭手術を2回も受け、50日近くの入院を余儀なくされたとしても、医療費は28万円強で済んでしまう。これは、国の医療保険と高額療養費制度のおかげで、おおむね最低30万円の貯金があれば、改めて民間の医療保険に加入する必要性は薄い、と末永氏は説く。