
パリは世界で最も公共交通システムが整備された都市のひとつだ。303もの駅をもつ地下鉄、細やかなネットワークで結ばれるバス、郊外まで延びるRER(首都圏高速鉄道)や電車、セーヌ川に浮かぶ水上バスなど、多彩な手段で移動できる。
にもかかわらず、電動スケートボードや自転車で通勤するパリっ子が増えている。バスや地下鉄を乗り継いで、ぎゅうぎゅう詰めの車内で1時間我慢するかわりに、自転車なら20分で済むうえに経済的かつ健康的だ。文字通り都市機能を麻痺させる、頻発する交通機関のストの影響をこうむることもない。かつては車で通勤していたビジネスパーソンも、悪化する一方の慢性的な渋滞や公害に業を煮やして、身軽な「マイクロモビリティ」を選択する傾向が強まっている。Le Monde紙(2016年10月6日付記事)によれば、子供のおもちゃでしかなかったキックスケーターは、いまや通勤・通学手段として年間100万台を売り上げ、マイクロモビリティの市場を牽引している。
環境を汚染することなく、いかに短時間で効率的に通勤できるか?「都市交通に革命を起こす」べく、二人のパリっ子が3年前に立ち上げたスタートアップ企業Weebotは、ジャイロボードから電動キックスケーター、電動自転車まで、幅広い「エコ・モビリティ」手段を開発・提供している。Le Figaro紙(2017年1月3日付記事)によれば、同社は起業から1年で230万ユーロ(約2億8,500万円)の売り上げを達成。5kmから10km程度の距離を、レジャー感覚で気軽に移動できる手段を手頃な価格帯で提供する戦略は、消費者のニーズにマッチしているようだ。Weebot社の顧客の平均消費額は600ユーロ(約74,000円)程度で、ちょっと良い自転車とほぼ変わらない価格帯だ。
セグウェイを買収したNinebotなど中国メーカーが占めるマイクロモビリティ市場に、Weebot社はフランスのメーカーとして切り込みをかける。1万人の顧客のフィードバックを反映させた最新のEバイクAeroが、現在クラウドファンディングで予約注文を受け付けている。
スピード、自律性、効率性を兼ね備え、最高時速35kmで70kmの距離まで走行可能。高さ120cm、幅32cm、奥行き77cmのコンパクトサイズにわずか3秒で折りたたむことができ、職場やジム、レストランのテーブルの下など、どこにでも持ち運べるポータビリティが魅力だ。
エンジンへの給電は、テスラの電気自動車と同様にパナソニックのリチウム電池を用いる。充電時間は2時間半から3時間。バッテリーの残量や距離、速度などのデータは防水液晶ディスプレイに表示される。