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50年続く東京・四谷のジャズ喫茶『いーぐる』にファンが集う理由

2017.12.12

 過日、50周年記念のパーティが開催され、そこでその秘密の一端がスピーチなどで披露されたので紹介しよう。

 80年代後半からはジャズ評論家・執筆家としても活躍する後藤氏だが、意外なことに開店当時はジャズの専門知識には乏しかったそうだ。商売道具であるレコードもジャズ・マニアの友人やお客さんの意見を取り入れ、他店をリサーチしながら、独自のコレクションを少しずつ構築していったという。「マニアがこうじて」ではないところが興味深いが、この出発点が「ジャズ喫茶=頑固オヤジ」とはひと味違ういーぐるらしさの原点になっている。もちろん後藤氏も頑固オヤジなのだが、頑固だけのオヤジではない。


後藤雅洋氏。

 特筆すべきは、店内でかけるレコード・CDの選曲。その場の思いつきではなく、事前にみっちりと練られた、流れを考えた曲順になっているという。行ったことがある人ならおわかりだろうが、なかなか席を立てないのにはそういう秘密があったのだ。DJという言葉がない時代から、いーぐるは、いわばDJ後藤のステージだったというわけだ。また現在も新譜を積極的にライブラリーに揃え、懐古趣味に陥ることなく生きたジャズを紹介しつづけている。

 看板のひとつであるオーディオ・システムも、たんに高級機を導入するのではなく、スタイルも時代も違うさまざまなジャズ(つまり音質がまちまち)を、どれも偏りなくいい音で聴かせることを目指して日々チューニングしているという。だから長時間聴いていても疲れない。

 また、ほぼ毎週土曜日に開催される「いーぐる連続講演」もジャズ喫茶としては、いや喫茶店でなくても珍しい試みだ。これはさまざまなジャンルの専門家を招いての、音楽を聴きながらのレクチャーなのだが、ジャズはもちろん、ロック、ラテンからクラシック音楽までと、とにかく幅が広い。しかもその回数は、なんと600回を超えている。オープンマインドな後藤氏は、つねに学ぶことを忘れないのだ。

「会話お断り」から想像される「頑固オヤジのマニア相手の店」かと思われがちだが、そこにはじつは深く考えられた柔軟な営業戦略もあったのだ。目指したものは、自分の趣味を客に押し付けることではなく、もちろん客に迎合することでもない。愛するジャズを広くかつ深く紹介していくこと。要するにいーぐるはジャズ愛の共有の場なのだ。だからこそジャズ・マニアにも初心者にも愛され続けてきたのだ。

 記念のパーティには100人を超える人がお祝いに集った。同業ジャズ喫茶の名物オーナーたちをはじめ、ジャズ評論家、レコード会社、放送・出版関係者、教育関係者、常連客、さらにミュージシャン、DJまで、50年の歴史と後藤氏の幅広い交友関係が表れた顔ぶれだった。ちなみに後藤氏は、いーぐると並行して70年代初頭にロック喫茶「ディスクチャート」を経営していたことは知る人ぞ知る事実。店ではのちにJ-Popを引っ張るミュージシャンたちがセッションを行ない、また「シュガーベイブ」誕生の場ともなった(大貫妙子氏は当時従業員で、閉店後に山下達郎氏らとリハーサルを行っていた)という縁で、シュガーベイブゆかりのギタリストの徳武弘文氏、はちみつぱいの和田博己氏も駆けつけた。


「日本のルイ・アームストロング」こと外山喜雄氏。50周年記念パーティでの祝賀演奏。

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