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2017.12.03

ノーベル経済学賞「ナッジ理論」は何がスゴくて、何がヤバい?

 人は迷う生き物だ。シンプルに生き残ることを第一優先にしているほかの生物に対して、人間の場合は使命感やプライド、利他主義などさまざまな要素が複雑に混ざり合い、その意思決定は一筋縄ではいかない。どちらを選ぶか迷った時、誰かにそっと腕を引かれたら確かについて行ってしまうかもしれないが……。

■ノーベル経済学賞を受賞した“ナッジ理論”とは

 カズオ・イシグロ氏の文学賞受賞に沸いた今年のノーベル賞だったが、経済学賞ではけっこう(かなり?)意外な研究の功績者が受賞することになった。“ナッジ理論”の創始者である行動経済学者のリチャード・セイラー氏である。

 行動経済学の研究が進むにつれ、人間の行動は必ずしも経済合理性を追求しているわけではないことが浮き彫りになっている。これらは“バイアス”という呼び名をつけられることが多く、代表的なものには確率的に得をする可能性が高い選択肢があっても変化を避ける“現状維持バイアス”や、何事においても自分は平均以上の存在であると思い込んでいる“優越性バイアス”などがある。

 そして今回ノーベル賞を受賞した研究であるナッジ理論は、こうした行動経済学の成果を総動員して、人々の“背中を押す”技術の総称である。語弊はあるが広い意味での人心操作だ。


Independent」より

 何らかの罰則を設定して、恐怖で人心を誘導するのではなく、あくまでも自由意志に訴える形でありながらも行動経済学の知見を駆使して意思決定に影響を及ぼすのがこの“ナッジ理論”の特色だ。人心操作という点ではそのぶんなかなか性質が悪いという言い方もできそうなのだが……。

「人々がどのように考えているかを知ることで、ナッジ理論は家族、社会に最適なものを選ぶことが容易になります」(『実践行動経済学:健康、富、幸福への聡明な選択』より)

 ナッジ理論が有効に作用した例としては、2012年にはじまったイギリスの貯蓄型企業年金(NEST)の加入への義務化である。これまでは勤労者がこの年金へ加入するかどうかは就業時に確認していたのだが、2012年以降は何の通知もなく特に申し出がなければ自動的に加入することになったのだ。この措置の後、2012年に270万人であった民間中小企業のNEST加入者が、2016年には770万人までに増加した。

 また先進各国で臓器提供者の数が増えないことが問題されているが、これもまた自動車免許更新時に臓器提供を前提にして、希望しない人は拒否を意思表示するチェックボックスにマークを入れる方式にしたところ、大幅に臓器提供者が増えたこともナッジ理論が応用されて成功した例である。

 そして政治にもこのナッジ理論は実際に応用されている。2009年にオバマ政権は法学者であり経済行動学者のキャス・サンスティーン氏を情報規制問題担当室(OIRA)局長に任命して世論への影響力を高めたといわれている。ノーベル経済学賞受賞でにわかに脚光を浴びたナッジ理論だが、あらためて眺めてみればすでに我々の社会に深く浸透していると言ってもよさそうだ。

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