
【やりたい企画と売れる企画、どちらを優先すべきか?】この連載では、自分が過去に考えてボツになった企画、すなわち「ボツネタ」を振り返ることで見えてくるビジネスアイデアのつくり方をご紹介します。
「やりたいことを実現したい!」という熱い気持ちで会社に入ったものの、全然やりたいことを実現できない…と嘆く人がいます。また、自社に強い商品があって、それを維持・拡大していけばいい環境にあったとしても、「新しいことをやりたい…現状に不満!」という人もいます。一方で、何かが流行し、売れていると聞くと、「儲かりそう!」と飛びつき、別のものが出てきたら、また次の流行を探すというスタイルの人もいるでしょう。
「やりたい」企画と、「売れる」企画。どちらを考えたいですか? 今回はその答えをお話します。
<今回のボツネタ>
【商品名】ゴキアンルーレット
【当時考えた商品概要】
外見をリアルに再現したゴキブリ型玩具。数人で順番に羽を触っていくと、1/6の確率で、ゴキブリがすさまじい勢いで飛ぶ! 史上最恐のドッキドキフィギュアゲーム。
【ボツになったポイント】
・自分がゴキブリにあまり思い入れがない(それほどゴキブリが苦手じゃない)
この商品企画は、実は、開発されれば売れる自信があります。それでも、僕はこの商品を自分で作ることはないと思います。
なぜでしょう?
■作るべき企画は、「やりたい」でも「売れる」でもなく…
僕は、ゴキブリがそんなに怖くありません。巨大なゴキブリや、大群などに遭遇したことがないからだと思うのですが、昔から、部屋で見つけたら指でつまんで外に逃がしていました。
そんな人間が、この商品の本質である「怖さ」を作り出すことはできません。
僕はこの商品を、苦手な人が絶叫するようなクオリティで作れたら、売れると確信しています。絶大に嫌われるものには需要があるからです。しかしそれは僕がやる仕事ではありません。原体験が基になっていない妄想の商品になってしまいます。
別の観点で見ると、コストを守りながら仕様を合わせる開発は難しいですし、ゴキブリというモチーフの特性上、流通面のハードルも予想されます。そのような壁を突破していくことはとても大変なことです。やり遂げる意志がなければ、ゴキブリの飛び方や外見のリアルさなどがだんだん薄れていき、最後には妥協した売れないものになって発売を迎えるでしょう。
売れる可能性が高くても、やりたくなければ、失敗する可能性の方が高くなるのです。ゴキブリの例は特殊ですが、例えば最近のビジネスのトレンドであるIoTや地方創生、VR…。儲かりそうなことに適当にフラフラ動いても成功しません。売れるモノづくりには意志が必要です。
では、やりたいという情熱があればその企画はOKなのかというと、そんなことはありません。自分がやりたくてたまらないと熱い気持ちを持っていても、誰にも求められない企画になることはしょっちゅうあります。
僕は、「やりたい」でも、「売れる」でもなく、
「買いたい」企画
を作るべきだと考えています。
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