
■連載/ペットゥモロー通信
あなたの愛犬は避妊去勢手術をしているだろうか? 一口に避妊去勢手術と言っても、メリットとデメリットがある。
日本やアメリカなどでは、将来的になるかもしれない性ホルモンに関連する病気を予防するため、もしくは望まない繁殖を避けるといったことを目的に避妊去勢手術が選択されることが多く、またそれが推奨されている感がある。
一方、ヨーロッパ在住の方に話を聞いてみると、スウェーデンに代表されるようなヨーロッパの国ではむしろ逆で、避妊去勢手術は極力避ける傾向にあり、手術を施すということは、飼い主が自分の犬をきちんと管理できないことの表れでもあるという考え方が主流になっているという。
どちらが正しいというわけでもなく、お国柄というか、犬とのつきあい方の違い、また犬環境の違いなど諸々の理由によって考え方が分かれるといったところだろう。
さて、ここ10年ほどで避妊去勢手術が犬の健康に及ぼす影響についていくつかの研究調査が行われたということであるが、この度、Veterinary Medicine and Scienceに発表されたBenjamin Hart教授(UC Davis School of Veterinary Medicine)らのジャーマン・シェパード・ドッグを対象にした新しい研究調査によると、1歳になる前に避妊(卵巣摘出)去勢手術をした犬では、特に前十字靭帯断裂のような関節障害のリスクが約3倍になることが見い出されたとのこと。
この調査では、14年半分(2000.1.1~2014.6.30)にわたる動物病院の記録を用いて1,170頭のジャーマン・シェパード・ドッグ(オス犬705頭=未去勢460頭、去勢済245頭/メス犬465頭=未避妊172頭、避妊済293頭)を避妊去勢していない犬、避妊去勢手術を生後6ヶ月前に受けた犬、生後6ヶ月~11ヶ月の間に受けた犬、生後12ヶ月~23ヶ月(1歳)の間に受けた犬、2歳~8歳の間に受けた犬、の5つのグループに分けて分析。
その結果から主なものを抜粋してみると、以下の表のようになる。
調査対象のジャーマン・シェパード・ドッグにおける各疾患の発症率
Neutering of German Shepherd Dogs : associated joint disorders, cancers and urinary incontinence(Benjamin L. Hart et.al.)を参考に作成
オス犬の場合、1つ以上の関節障害があったのは、去勢手術をしていないオス犬では約7%であるのに対して、生後6ヶ月未満で去勢手術をしたオス犬では約21%、生後6ヶ月~11ヶ月で去勢手術をした犬では約16%、これを1歳前に去勢手術をした犬として見ると17.8%だったそうだ。