
誰がこの狂騒を想像しただろうか。テレビは連日彼を追いかけ、新聞社はバンバン号外を出すなど一躍、時の人となっている藤井四段。今回は彼の名言を駒にたとえてランキングし、勝手な解釈をしつつ素顔に迫った。
まず〝角〟(3位)は巷で話題になった「僥倖(ぎょうこう)」。一般ではほぼ使用されないが、将棋界では案外なじみが深い。その理由は『賭博黙示録カイジ』(講談社)にある。棋士に愛読者の多いこの漫画には頻繁に「僥倖」が登場し、それを日常会話で使う人も少なくないのだ。とはいえ藤井がカイジ愛読者かどうかは未確認。読書好きの彼のことだから、夏目漱石の『それから』に出てくる「僥倖」を拝借したのかも。
〝飛車〟(2位)は将棋界の在り方を問いかけた言葉。今春の電王戦では、時の名人が将棋ソフトに敗れた。そんな激動の中で地に足をつけ、真っ直ぐに未来を見つめる。「今回の人生は何週目?」と尋ねたくなる。
〝王将〟(1位)は学校の授業に疑問を呈した言葉。将棋に関係ないと思われるが、物事は万事通じるもの。とっくに解き終わった詰め将棋の前に座らされているのは彼にとってナンセンス。それと同じことなのだろう。
「持ち時間の使い方」を見ても、時間や効率に対する鋭敏な感性が見て取れる。何から何まで、全く底が知れない14歳である。