
自分の財産の相続についてどれくらい考えているだろうか。30~40代ではまだそこまでリアルに感じてはいないはずだ。しかし、相続は意外と自分ゴトの面があるという。今から準備しておくことでトラブルや面倒を回避できることもある。
相続診断協会(JiDA)の広報で秘書として活躍する「相続診断士」の斎藤克衣さんに、相続がなぜ自分ゴトなのか、そして相続診断について聞いた。
■相続手続が簡単になる制度が今年5月にスタート
相続の問題というと相続争いや相続税、相続登記されないまま放置されている不動産などがある。このうち、相続登記されない不動産は、いわゆる所有者不明の土地や空き家問題の一つの要因となっているといわれる。相続登記しない原因の一つが「手続きが面倒」で先延ばしにすることだ。
そこで相続登記を促進させるために作られたのが、平成29年5月29日から始まった「法定相続情報証明制度」だ。
簡単にいえば、相続手続の面倒が多少省かれる制度である。従来、戸籍謄本等の束を何度も出し直す必要があった相続手続きも、一度登記所(法務局)に戸籍謄本等と併せて相続関係を一覧に表した図「法定相続情報一覧図」を出せば、無料で登記官が一覧図に認証文を付した写しを交付してくれる。そして以後の相続手続は戸籍謄本等の提出の代わりにその法定相続情報一覧図の写しだけで行えるのだ。
この制度について、相続診断士の斎藤克衣さんは次のように言う。
「便利な制度だと思います。出生から亡くなるまでの戸籍謄本を集めるのは、家族であっても集めるのが大変な作業です。遠方の場合や、縦書きの手書きで書かれた古い戸籍になってしまうと読むことだけでも一苦労です。
不動産の相続登記の申請手続きだけではなく、被相続人名義の預金の払戻し等、様々な相続手続きに利用できます。預金口座がいくつかある場合でも手続きを同時に進めることができるので、時間短縮になります。
相続登記が未了のまま不動産を放置していると、いざ登記をしようとした場合、さらに相続が発生し、より複雑な状況になってしまう恐れがあります。相続登記は義務ではないため、いつでもいいと考えている方もいますが、先延ばしにするとデメリットがあるという事をもっと知っていただきたいですね」(斎藤さん)