■散歩は脳をクリエイティブにする
先月開催された伊勢志摩サミットでは、各国首脳が風光明媚な境内を歩く様子が報道陣に公開されて多くのニュースでとりあげられたのは記憶に新しい。この散歩の時間はもちろん対外的なパフォーマンスの意味合いが大きいと思うが、重要な会議の話し合いの前に散歩をすることは、新しいアイディアをもたらすなど、脳をクリエイティブにしてくれるという研究が発表されている。
2004年に発表された研究では、スタンフォード大学で行なわれた実験が紹介されている。3種類の実験が行なわれたのだが、そのうちの1つは、2グループの48人に創造力を測る2セットのテストを課した。
・Aグループ:1回目のテストを歩きながら行ない、2回目のテストを座った状態で行なった。
・Bグループ:2回のテストをどちらも座った状態で行なった。
テストは“自由発想”を測るテストで、例えばありふれた物品の別の使い方を考え出したり、複雑な物事に共通の要素を見つけ出す類推能力などを測るテストだ。
以前に行なった実験で、歩いている状態のほうが創造力が高まることがすでに実証されていたのだが、やはり最も成績が良かったのは、Aグループの1回目のテストであった。そして、2番目に成績が良かったのは、同じくAグループの2回目のテストだったのである。
2回のテストをどちらも座って行なったBグループは、要領を心得た2回目のテストでは集中力を発揮して良い成績を収められるのではないかという予想もあったのだが、実際にはAグループに2回とも敵うことはなかったのだ。これはいったいどういうことか。
研究によれば、それは歩いたことによる残留効果があるからだと説明している。歩いて身体を動かした体験は、その直後に座ったとしてもしばらく続くのである。したがって、会議などの前に歩くことは斬新なアイディアを出したり、有意義な議論を行なったりするためにもとても有益な行為だったのだ。伊勢志摩サミットでも、合同での散歩の後にはさぞや有意義な議論が行なわれたのだと信じたいものだが……。
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