■「テストステロン」を増やすトレーニングのポイントは「負荷をかけすぎない」こと
そこで、まずはテストステロンをトレーニングで効率的に増やすための方法を辻村先生に教えてもらった。
「一番効率的なのは、『筋肉トレーニング』を行なうことです。筋肉トレーニングを行なうことによって、筋肉内の『アンドロゲン受容体(AR)』の発現に影響が出ることが知られています。アンドロゲン受容体(AR)とは、あらゆる男性ホルモンを受け取る受容体のことです。筋肉トレーニングの運動負荷後、筋肉内のARは一時的に発現が低下しましたが、回復期には発現上昇したと報告されています。
おすすめの筋力トレーニングの例としては、「スロースクワット10回(インターバル1分×3セット)を毎日行なう程度が有効です。また『30分程度のウォーキング』もいいでしょう。
反対に、あまりに激しい運動、例えば、短期間に何度もマラソン大会に参加するなどは、かえってテストステロンを低下させてしまいますので、注意が必要です」
■「テストステロン」を増やす食事の要は「動物性たんぱく質」
次に、筋肉トレーニングのサポートとして、テストステロンを増やすのに役立つ食材を辻村先生に教えてもらった。
●たんぱく質【卵、牛肉、豚肉、鶏肉、魚、牛乳、大豆プロテインなど】
「たんぱく質を多く含む食事は、テストステロン・レベルを上げ、筋量増強効果も期待できます。よって、テストステロン強化という意味ではまさに理想的な食事です。
ただし、必須アミノ酸の中でも重要な『リジン』は、植物性食品にはほとんど含まれていないので、動物性たんぱく質の摂取が不可欠です。動物性たんぱく質とは、肉や魚、乳製品などを指し、植物性たんぱく質は大豆などを指します」
●「アリシン」を含む食材【ニンニク、ニラ、ネギ、タマネギなど】
「『アリシン』が含まれるニンニクやネギ、玉ねぎ、ニラは、高タンパクな食事と一緒に摂取すると、テストステロンが有意に上昇します。アリシンは、肉に多く含まれるビタミンB1と結合すると『アリチアミン』となります。アリチアミンに変化すると、ビタミンB1よりも体内に長く蓄えることができるため、ビタミンB1の働きがより持続します。ビタミンB1は糖質をエネルギーに変える栄養素ですから、エネルギーが長続きし、スタミナが向上します」
これらの食材をうまく組み合わせた食事メニューを選ぶようにしよう。
■筋力アップが見込める男性ホルモン治療とは?
筋力アップは、男性ホルモン治療によっても実現可能だという。今、行なわれている男性ホルモン治療のうち、筋力アップができる治療法にはどのようなものがあるのだろうか?
「筋力を上昇させることのできる男性ホルモン治療には、『テストステロン補充』という方法があります。これは基本的に注射療法で行なわれるものです。定期的な注射により、テストステロンを高めた状態で、運動トレーニングを行なうことで筋力を上昇させます」
場合によっては、男性ホルモン治療を選択するということもできるだろう。
ひとまず、日々の筋力低下を感じ始めている人は、ぜひトレーニングや食事術を実践し、テストステロン上昇と筋力の復活を目指してみてはいかがだろうか?
辻村晃(つじむら・あきら)さん
順天堂大学医学部附属浦安病院 泌尿器科 先任准教授。メンズヘルスクリニック東京 男性更年期専門外来ドクター。国立病院機構大阪医療センター勤務後、ニューヨーク大学に留学し、細胞生物学臨床研究員を務める。大阪大学医学部泌尿器科准教授などを経て、順天堂大学医学部泌尿器科学講座先任准教授。特に生殖医学、性機能障害の治療に注力し、現在ではテストステロンに着目し、男性力を上げる治療を提供している。http://www.menshealth-tokyo.com/
取材・文/石原亜香利
※記事内のデータ等については取材時のものです。