
「セクハラ」「パワハラ」という言葉が一般的になり、女性の活躍推進や働き方改革など、ビジネスパーソンを取り巻く労働環境も変化が求められるようになってきた。では、企業のセクハラ防止対策は、どれくらい進んでいるだろうか。eラーニングによる研修の企画と教材開発のエデュテイメントプラネットが昨年、全国の20~60代の経営者・役員、会社員などを対象に、社内研修の実施状況と「ハラスメント研修」の受講経験について調査を行なったところ、研修実施の有無については、企業規模で大きな差があることがわかった。
最初の質問では、勤務先における「全社員を対象」、あるいは「入社・昇進・異動者(以降『特定の者』といいます)を対象」とした研修の実施状況を質問しましたが、いずれについても「わからない/実施されていない」と回答した人が29.1%という結果となった。
企業規模による研修実施状況は、【表1】のとおり5割程度の実施状況にとどまる300人未満の事業者(「中小企業」と表現します)に対し、300人以上の事業者(同「大企業」)については7割以上の実施があり、大きな開きがある実態が明るみになった。
■研修の受講スタイルは集合研修がなおも主流~業種によって特徴的な結果も
受講スタイルは【表2】のとおり、講義・グループワークを中心とした集合研修が依然主流であり、聞くことが中心のもの(76.0%)、グループワーク(64.6%)という結果となった。
また、「ソフトウェア開発・ITサービス運用/保守・金融」業種におけるeラーニングの受講経験が52.0%と比較的高い割合を示しています。加え、「公務員・公共団体・学校」についてはグループワークや、書籍・資料の支給のスタイルについて調査全体の数値よりも大きく高い結果が現れており、業種によって取り入れる手段に違いが現れるケースもあることがわかる。
■法的義務であるセクハラ防止対策に一層の取り組みが必要
2007年4月に施行された改正男女雇用機会均等法によって、セクシュアルハラスメント(セクハラ)についての対策は「事業主が雇用管理上必要な措置」として「管理・監督者を含む労働者に周知・啓発すること」を義務づけている。また、企業のコンプライアンス意識が高まっている背景もあり、その中でもハラスメント防止対策は最重要課題となっている。一方、セクハラ以外にはパワーハラスメント(パワハラ)も近年大きく取りあげられるようになっている。法令による明確な規定はまだありませんが、厚生労働省が2012年に「職場のいじめ・嫌がらせ問題に関する円卓会議ワーキング・グループ」を立ち上げるなど、官民ともに職場のハラスメントについての意識が高まっている。
このような背景から、特にセクハラ・パワハラの防止対策について、企業の意識が高まり、調査回答者においても高い研修受講状況がうかがえるのではないかと同社は予想し、質問した。
しかしながら、質問の中でも最も高い割合となったセクハラについての研修受講経験であっても、【表3】のとおり、41.3%と本質問の回答対象となった387人の中でも、半数以下という結果になった。
この結果は社内研修の実施タイミングについて、「わからない/実施されていない」と回答した人をのぞいているため、これらの人を加えた今回の調査対象者全員(546人)で換算すると29.3%となり、3割を切ることが明るみになる。
社内研修が唯一の「セクハラ防止対策」ではないが、、今回の調査結果から考えると、多くの事業者が問題意識の周知・啓発を従業員に対して「セクハラ防止対策」を十分行うことができていないか、行っていたとしても従業員が「実感できる」ものを提供できていない可能性があるといえるのではないだろうか。
【調査概要】
調査方法:インターネットによるアンケート
調査属性:20~60代の企業役員、会社員(派遣社員なども含む)546名
調査期間:2016年3月2日(水)~3月4日(金)