
開放される空間の大小とそこから生まれる優雅さは比例するものではないな、と改めて感じることができた、リトラクタブルハードトップのマツダ『ロードスターRF』。オープン時のキャビンの、独特の包まれ感と快適さから毎日でもトップ(ルーフ)を開けて走りたいと思える一台だ。日本で発売されているソフトトップモデルの『ロードスター』には未搭載の2Lエンジンが走りに余裕をもたらす、大人のオトコとオンナにピッタリなオープンモデルに仕上がっている。
センターコンソール上に配置されたスイッチを押すこと約13秒でメタルトップは“折り紙”のような巧みさでリヤシート後方に格納され、車内は静寂から例えば家で一番大きな窓の前に立って、その窓を開け放したときのような“度合”で外界の音や空気が流れ込んでくる。大胆に変化するというよりは緩やかに、静かに息を吸い込みたくなるような印象だ。そして、その穏やかな空気感を街中から高速まで、ドライブ中、変わらずに享受できる。
デザインについて、チーフデザイナーの中山雅氏はこう解説する。
「ソフトトップモデルの『ロードスター』が正統なライトウエイトスポーツとしての魅力をストイックに研ぎ澄ましたものだとすれば、『RF』は誰もが美しいと思える“小さな”スポーツカーの姿を、何ものにもとらわれることなく素直に表現したもう一台の『ロードスター』です」
加えて、冒頭では毎日でもルーフを開けたくなると申し上げたが、デザイナーは実は『RF』はクローズドスタイルの機会が多いことを想定して、クローズ時のシルエットにこだわっているという。ソフトトップの『ロードスター』は世界の自動車メーカーに再びライトウエイトスポーツカーを造る気にさせたほどのモデルであり、そのスタイルはすでに確立されている。
が、『RF』は再び、いや新たにというべきだろうか、世界中のスポーツカー好きのみならず、美しいもしくはカッコいいクルマを所有したいドライバーに注目されてしかるべし。それほどの質の高さをデザインからも感じることができるのだ。ちなみに、ポルシェの『タルガ』を知る方にとっては『RF』も「タルガトップ」と呼ぶのでは? と思われるかもしれない。マツダとしては『RF』はリヤウインドウが開く点が『タルガ』との最大の違いだという。