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マクラーレン『570GT』に秘められた実用性と快適性

2016.08.31

 ロバーツ氏から『570GT』について一通りの説明を受けた後、隣に展示されていた1992年製のマクラーレンF1の傍に移動した。彼は、この伝説的なスーパースポーツのプロジェクトに携わっていたのだ。

マクラーレンのデザイン部門責任者に聞く『570GT』へのこだわり

「F1を開発していた頃は、毎日がエキサイティングでした。マクラーレンが市販スポーツカーを開発することになったので、すべての妥協を排除して完璧な仕事を目標に掲げました」

 ロバーツ氏は眼をキラキラさせて、F1のディテールを説明してくれる。展示のためにドアがロックされていて、説明したい部分に近寄れないことをもどかしんでいた。

マクラーレンのデザイン部門責任者に聞く『570GT』へのこだわり

「パーキングブレーキレバーが見えますか? 普通のクルマのレバーとは全く違った形状をしていますが、あの形状が最も握りやすく、それでいて美しいのです」

 パーキングブレーキのレバーなどにこだわらなくてもいいじゃないかと思ってしまうが、そうではないのだという。

マクラーレンのデザイン部門責任者に聞く『570GT』へのこだわり

「妥協をしたくなかったのです。もちろん今までのレバーの形状で事は足ります。でも、美しくはありません。そこでアルミを削り出して、あのような形状にしたのです」

 確かに、F1のパーキングブレーキレバーは通常の棒のようなレバーではなく、何にも似ていない。角度によっては現代美術の彫刻作品のようにも見える。

「メーターも、このクルマのためだけに造りました」

 ロバーツ氏はマクラーレンのデザインスタジオの責任者で、仕事の範囲は個々のクルマのデザインから予算やスケジュール、将来のニューモデルやスペシャルモデルの製作などにも及ぶ広いものだ。欧米の自動車メーカーでは、メーカー間での異動が激しいが、彼は1990年にロータスから移ってきて以来25年もマクラーレンでキャリアを積み重ねてきている。

 管理職となって現場を離れてしまうのではなく、メーカーの礎を築いたモデルに携わった人物が今でも第一線のデザインワークに関係しているところが、歴史の若いマクラーレンが他の自動車メーカー各社と互角以上に渡り合えている理由の一つに数えられると言えるのではないだろうか。

マクラーレンのデザイン部門責任者に聞く『570GT』へのこだわり

■関連情報
http://www.tokyo.mclaren.com/cars/mclaren-570gt

文/金子浩久

モータリングライター。1961年東京生まれ。新車試乗にモーターショー、クルマ紀行にと地球狭しと駆け巡っている。取材モットーは“説明よりも解釈を”。最新刊に『ユーラシア横断1万5000キロ』。

■連載/金子浩久のEクルマ、Aクルマ

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