織田隼生《Nature –Delta–》
「三角形と螺旋」を主題に、植物の形の成り立ちとその形が持つ原理・原則を抽出し、数学的に彫刻形成を試みた、織田隼生氏の《Nature –Delta–》。加工の難しいステンレススチールを用い、すべて手作業で造形していったという。
「植物は意外と有機的な形に見えて、規則正しい形をしています。それを自分は『プログラムみたいだな』と思ったんです。プロセスを先に設計して、それに基づいて造形する。敢えて手作業にすることでまったく同じにならないことが、作品としての完成度を上げるのではないかと思い、この方法を採用しました。数式がわからなくても、感覚的に観てもらい、作品の中から規則性を見つけ出してもらいたいですね」(織田隼生氏)。
大竹亮峯 《竹の水仙-双-》
「落語、竹の水仙に登場する水仙を実現して欲しい」という言葉がきっかけとなり制作に至ったという、彫刻《竹の水仙》。今回、大竹氏は二連の花を時間差で咲かせる新たな試みを行い、会場では実際に作品に水を注ぎ、花弁が開く様子を披露した。
「彫刻は『静物』が基本だと思うんですが、そこに『時間』を加えたかったんです。みんなで花が咲くまでの時間を待つ、その時間を演出することが、この作品の一番の目的です。『ただ咲く』のではなく、咲き方や動きにも、感情を感じられるように制作しています」(大竹亮峯氏)。
松本涼 《枯花》
1本の木から薔薇を彫り上げた、松本涼氏の《枯花》。木が生きた証である「年輪」に沿って無数の彫り込みが入っており、その1本1本に時を感じながら掘り進めたという。どの角度から観ても異なる趣があり、作者が制作に欠けた月日がその緻密さから伝わってくる。
「薔薇を彫っているんですけど、『人』なんです。私のおばあちゃんやひいおばあちゃんが本当に素敵な人だったんですが、死んでいくわけです。それを表現したいと思い薔薇を選びました。『人なんだ』と思った時に、薔薇じゃない見え方になってくると思うんです。そういうものを感じとっていただいて『私はこういうふうに思ったよ』と教えてくれたら嬉しいですね」(松本涼氏)。