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目指すはアスリート人材の有効活用、元日本代表・羽生直剛に起業を決意させたオシム監督の一言

2023.10.19

3人のスタッフとともに「アスリートが一般社会で輝ける体制づくり」にまい進

このように最初は単独での活動がメインだったが、2023年2月からは事業領域をアップデート。元Jリーガーの河野広貴、女子サッカー選手の中田有紀、ライフセービング選手の田中綾の3人をメンバーに加え、セカンドキャリア支援などに乗り出したのだ。

「アスリートのセカンドキャリア、マイナー競技選手の環境作りというのは、スポーツ界を取り巻く大きな課題です。彼らの受け皿を作り、アスリートの価値を高め、スポーツの意味をより広く伝えていきたいというのが僕の願い。その考えに賛同してくれた3人と協力しながら少しずつ事業を広げています。

河野と田中は週2回、僕の会社で働き、それ以外の週3回は提携先企業と協業する形で社会経験を養っています。河野は現在、M&Aの仲介会社でマーケティング広報部と連携しています。田中の場合はコンサルティング会社に2カ月お世話になったり、在宅介護を受ける患者さんに薬を届けるサービスを手掛ける薬局との協業を経験しました。彼女は現役選手なので夕方から練習に行けるように配慮してもらっていて、安定した収入を得ながら競技力向上に邁進しています。

薬局で働く田中綾。羽生にとっては力強い戦力の1人だ(本人提供)

中田はスペインにいるので、FC東京のスポンサー営業の手伝い、スポーツブランドの販促のサポート、SNS関係の作業などを担当してもらっています。

こうして職務経験を積み重ねることで、彼らにはいずれ僕の会社で活躍できるような人材になってもらいたいと思いますし、自分で起業することも可能でしょう。そうやってアスリートが一般社会でも輝いてくれることが僕の一番の喜びなんです」とチャレンジするものを見つけた羽生は本当にイキイキしている。

今後はお世話になったジェフ千葉をはじめ、関東1部所属のサッカークラブ・VONDS市原、なでしこリーグ1部のオルカ鴨川などのサッカークラブや、地元・千葉にゆかりのあるさまざまなスポーツクラブやアスリートのスポンサー営業代理業を積極的に手掛け、地域貢献や恩返しをしていきたいという羽生。Jリーグで16年間戦い抜いた気力・体力・知力はセカンドキャリアにも大いに役立っている。

そうやってゼロから新たなビジネスモデルを構築している姿をオシム監督も天国から見守っているに違いない。多くのビジネスパーソンも彼の生きざまから学べることは少なくないはずだ(本文中敬称略)。

羽生はこれからも意欲あるスタッフとともに前進を続けていく(本人提供)

取材・文/元川悦子
長野県松本深志高等学校、千葉大学法経学部卒業後、日本海事新聞を経て1994年からフリー・ライターとなる。日本代表に関しては特に精力的な取材を行っており、アウェー戦も全て現地取材している。ワールドカップは1994年アメリカ大会から2014年ブラジル大会まで6大会連続で現地へ赴いている。著作は『U−22フィリップトルシエとプラチナエイジの419日』(小学館)、『蹴音』(主婦の友)『僕らがサッカーボーイズだった頃2 プロサッカー選手のジュニア時代」(カンゼン)『勝利の街に響け凱歌 松本山雅という奇跡のクラブ』(汐文社)ほか多数。

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