スポーツブランドを取り扱う新興企業のサポート、自治体連携など業務拡大に奔走
実際に行動を起こしたのは翌年だ。羽生がまず考えたのがFC東京との関係。2年間強化部に携わっただけで離れてしまうのは無責任だという気持ちもあり、「会社のビジネスサイドに関与できないか」と提案。クラブナビゲーターという役職で契約を結び、営業部門やプロモーションのサポートを手掛けるようになったのだ。コロナ禍真っ只中で観客制限が続き、FC東京側も営業面で頭を悩ませていたため、羽生はクラブコミュニケーターの元日本代表・石川直宏とともに「青赤パークオンライン」というユーチューブ配信番組に毎試合出演。機運盛り上げに一役買うなど、自分なりにできるアクションを起こしていった。
FC東京の活動と並行し、羽生はスポーツブランドを取り扱う新興企業など3社とパートナーシップ契約を締結。販促アイディアを出したり、新規コンテンツの開発などに寄与する活動を行うようになったのだ。
「セカンドステージという会社が大学生のサークル大会の景品を扱うということで、タイのスポーツブランドから商品を卸す話になったので、僕も品質の確認や販促ネットワーク拡大に関わらせてもらいました。タイはご存じの通り、年中猛暑で冬がない。そういう国で作られた冬物製品は機能性やデザインなどあらゆる面で不備が出てきがちです。そういう部分を1つ1つチェックして、提言するのが僕の仕事。プロ選手だった経験も生かせますし、やりがいを感じました」と羽生は笑顔をのぞかせる。
一方で、マーキュリーという会社からは「千葉県長南町の廃校を有効活用すべく、サッカー部を作ってほしい」という打診があり、役場関係者や地域住民と話し合いの場を持ったり、実際に部を立ち上げるために必要な費用・設備・スタッフなどの具体案を考えるといった仕事も請け負ったという。
「これに関しては難しいという結論に至りましたが、サーフィンのメッカとして有名な一宮町(いちのみやちょう)に近いエリアということで、サーフィン部を作ったらどうかという提案をして、今も議論は進行中です。
同社は地域貢献活動に軸足を置いているので、そのブランディングやCSR(企業の社会的責任)活動を僕に委託してくれています。最近は子供たちの運動教室を開いたり、町おこし協力隊とディスカッションする場を設けたりといろんな形で取り組んでいます。
未知なるものを作るのは大きなやりがい。それをオシムさんも感じていたから、指導者としてさまざまな国へ赴き、選手を育てたんでしょう。人の役に立って『ありがとう』と言われる機会を増やせれば、僕にとっては大きな喜び。そういう仕事を数多く手掛けていきたいと思っています」と彼は目を輝かせる。
これまで未経験の農業にも携わる機会があったという(本人提供)