引退後はFC東京のスカウトに。そこで自分自身のチャレンジを真剣に模索
その後、FC東京、ヴァンフォーレ甲府でプレー。最後は古巣・千葉に戻って戦い、2018年1月に引退を発表した羽生。セカンドキャリアの第一歩はFC東京の強化部スカウト担当という仕事だった。FC東京時代の強化部長・立石敬之(現シントトロイデンCEO)から誘いがあり、引き受けることにしたという。
「現役時代の僕はサッカーに全力を注ぐことだけを考えていたので、引退後の準備は何もしていませんでした。そんな時、立石さんから『フロントかコーチかどっちに興味があるのか』と聞かれ、強化部門で働かせてもらうことになりました。
ただ、立石さんもすぐにシントトロイデンに行ってしまいましたし、サッカークラブの内部や社会、組織を学ぶいい経験にはなりましたが、日々過ごしていく中で『このままでいいのか』という不安を覚えるようになりました。『本当に自分がチャレンジしているのか』という疑問も湧いてきて、違う道を選ぶべきなのかなと徐々に考えるようになったんです」
迷いが生じた羽生の背中を押したのは、やはり偉大な恩師だった。
「スカウトの仕事を1年終えた2019年にボスニアのオシムさんを訪ねる機会があったんです。だいぶ弱っていたし、この時が実際に会えた最後の機会だった。今思うと、行ってよかったなと心底、感じています。
そこで聞かれたのは『なんでお前は指導者をやらないのか』ということ。『オシムさんと同じ領域に行っても勝てる気がしないから』と冗談交じりに伝えながら、自分が前々からうっすらと考えていた『会社を作ってチャレンジしていきたい』という思いを口にすると、『そうか…』と。少し間を空けて『空は果てしない』という言葉が返ってきました。
人間に限界はないし、チャレンジし続けることが大事だということを言いたいんだなと僕は感じた。そのやりとりを機に、自分は起業への思いが強まりましたね」と彼は神妙な面持ちで言う。
FC東京とは引退後、ずっといい関係が続いている。コロナ禍には石川直宏とユーチューブ配信番組にも出演(本人提供)