従業員エンゲージメント向上施策の事例
従業員エンゲージメントを高める取り組み例として、工業用シール製品の大手メーカー株式会社バルカーと、金融大手の株式会社みずほファイナンシャルグループの事例を見ていこう。
1.バルカーのウェルビーイングパーティー開催事例
バルカーは海外にグループ会社を中国、台湾、タイ、韓国、シンガポール、米国、ベトナムに9社持つ。そのグループ会社の従業員エンゲージメントを高める施策として、「ウェルビーイングパーティー」と題して交流イベントを開催している。
今年6月に韓国で行われた回では、日本のバルカー本社のCEOや役員が直接、感謝の意を述べたり、ダンスパフォーマンスを披露したり、社員の近況報告のビデオメッセージを放映したり、長い勤続年数の社員を表彰したりして大いに盛り上がった。
この施策の背景とねらいについて、同社常務執行役員の伏屋克俊氏に話を聞いた。
「ウェルビーイングパーティーは褒めること、評価をすることを前提に始めました。『well-being(ウェルビーイング)』の『being = 一緒に居る』の意から、『あなたが一緒にバルカーに居て、一緒に目標を追いかけてくれてありがとう』という意味を込めています。社員の皆さんが居ることは当たり前ではないという事実に対して、深い感謝の気持ちを持つことを目的としています」
すでにイベントは2022年からベトナム、台湾、タイ、韓国4回開催されており、それぞれ現地スタッフの30〜60名ほどが参加し、バルカーからはCEOや役員が5名が参加した。
●従業員エンゲージメントを高める施策の効果
ウェルビーイングパーティーを通じて、次の効果が出ているという。
・自分たちが上司から感謝されていることが実感でき、社員間・部下・上司への『ありがとう』が増えた。(バルカーベトナム)
・離職率の低下につながり、5月以降、自己都合による退職者はゼロになった。(タイバルカー)
・日本語を学ぼうとする従業員が増加し、成長意欲が高まり、ポジションアップを図ろうとする従業員が増えた。(タイバルカー)
これらの効果を見るに、従業員エンゲージメント向上に寄与しているようだ。
2.みずほフィナンシャルグループの組織活性化プロジェクト実施事例
みずほフィナンシャルグループでは、事業単位で独立した会社(カンパニー)として扱うカンパニー制を採っており、各カンパニーはそれぞれ独自に工夫を凝らした従業員エンゲージメント向上施策に取り組んでいる。そのカンパニーの一つである「コーポレート&インベストメントバンキングカンパニー(以下、CIBC)」が推進している施策が「組織活性化プロジェクト」である。
コーポレート&インベストメントバンキング業務部 調査役の太田和宏氏に話を聞いた。
「本プロジェクトはCIBCに所属する社員のモチベーション向上を目的に、『明るく活力に満ちた魅力的な組織実現』をスローガンとして昨年度から取り組んでいるものです。
一貫して社員参加を重視しており、所属社員のインタビューや公募した社員約40名によるワークショップ、3,000を超える社員からのアンケート回答に基づき、最終的に実行する施策を選定しています。また公募した20名を超える有志メンバーと共に推進しています」
現在、取り組んでいる施策は10前後。そのうち、エンゲージメント向上に資する取り組みの一つとして「ファーストペンギン」がある。
「組織として『挑戦』する行動様式の定着を目的に、取り組み規模や業績貢献度合いに関わらず、挑戦する行動そのものを組織で評価する取り組みとして今年度に開始しました。受賞者発表や受賞者インタビューを社内HPに掲載し、具体的な取り組みの内容や挑戦に至る背景までを発信しています」
●従業員エンゲージメントを高める施策の効果
ファーストペンギンの施策を実施することにより、どのような効果が出ているのだろうか。
「本施策の認知が向上することで、視聴している社員の挑戦への意識醸成や行動変化などにつながったとの声が挙がっています。例えば『自らも見習って挑戦しよう!みずほにもこんな人がいて組織の強さを感じた!』などです。受賞者からも、さらに新しいことへ挑戦するモチベーションになったなどの声があることから、従業員のパフォーマンス向上にもつながっていると実感しています」
従業員エンゲージメントは、これからの時代の重要なキーワードの一つだ。会社にとっても働き手にとっても、今一度、その重要性と価値を意識してみるのも良さそうだ。
【取材協力】
黒田天兵氏
株式会社揚羽 ブランドコンサルティンググループ グループ長
株式会社揚羽入社以降、「日本のサラリーマンを元気にしたい」という信念のもと、インナーブランディングの専門家として、200以上の企業・スポーツ団体などの理念策定とその浸透活動に携わる。著書:『組織は「言葉」から変わる。ストーリーでわかるエンゲージメント入門』(朝日新聞出版)
https://www.ageha.tv/
文/石原亜香利