人手不足や人的資本経営へのシフトなどから「従業員エンゲージメント」を高める取り組みを進める企業が増えている。働き手としてもエンゲージメントが高いほうがパフォーマンス高く働ける可能性がある。
そこで今回は、専門家に従業員エンゲージメントの概要から、働き手個人が高めることのメリットや高め方まで聞いた。また、従業員エンゲージメントを高める取り組みを行っている2社の事例を取り上げる。
従業員エンゲージメントとは?
株式会社揚羽で企業のインナーブランディングを行う黒田天兵氏は、「エンゲージメントとは、つまり『自分以外の何か・誰かをどれだけ愛しているか』ということです。本質は『利他の精神』『誰か・何かへの貢献意欲』とも表現できます」と話す。
では、従業員エンゲージメントにはどのような意味があるのか。
「従業員エンゲージメントは、エンゲージメントの意味から、『会社の仲間をどれだけ愛しているか』を表します。従業員エンゲージメントのうち、特に仕事に対するエンゲージメントを『ワークエンゲージメント』と呼びますが、これは『自分の仕事をどれだけ愛しているか』を表します」
働き手がワークエンゲージメントを高めるメリット
働き手として、ワークエンゲージメントを高めることには多数のメリットがあるという。
「ワークエンゲージメントがとても高い人の例え話として、ジョン・F・ケネディ元大統領がNASAを訪れた際に出会った清掃員のエピソードがよく取り上げられます。ケネディ元大統領がNASAを訪れたとき、一人の清掃員が床を磨いている姿を見かけたところ、他の清掃員とは様子がまったく異なったそうです。他のスタッフがつまらなさそうに清掃をしているのに比べて、その男性一人だけがとても楽しそうに床を磨いていました。ケネディ元大統領はその姿に興味を惹かれ『何をしているのか?』と訪ねると、彼は『私はこのオフィスの掃除を通じて、人類が月に到達するためのお手伝いをしています』と答えました。彼は人類の夢のプロジェクトを実現する一員であるというビジョンを持って働いていたのです。
ワークエンゲージメントが高いということは、『志や夢を抱いて仕事に取り組めている』ということであり、その気持ちは、仕事の中での一挙手一投足に現れ、パフォーマンスの向上にもつながります」
働き手が従業員エンゲージメント高める方法
働き手として、自身の従業員エンゲージメントを高めるには、どうすればいいだろうか。
「重要なことは、会社のことをもっと知ることだと考えます。会社のことを知りもしないのに、愛することができるはずもありません。会社も人の集まりです。会社の歴史を築いてきた『人』、そして今、意思決定を行っている『人』のことをもっと知ろうとすることをおすすめします。誰かに聞いたり、社内報を読んだりして知ることがスタートです。機会があれば、直接、経営者や役員の方々に尋ねてみても良いと思います。
特にワークエンゲージメントを高めるには、今、目の前の仕事が、最終的に誰の何の役に立っているのかを考えることだと思います。自分の仕事の影響の輪がどこまで広がっているかを想像してみてください。そして、必ず行動に移すことを心がけてください」