開発で苦労したのは「しみこみ」問題
開発で苦労した点をキッコーマンに聞くと、スープや鍋メニューを調理する際の悩みの調査で「煮込む時間が短いと野菜などの食材に味がしみこまない」逆に「煮込み過ぎると、お肉が固くなる」といったジレンマを抱えていることがわかったため、「短時間で”味がしみる”・”豆腐がとろけて味が絡む”・”お肉がやわらかくなる”」ことを追求したという。
「鍋」:秋冬の週末<「おかずスープ」:オールシーズンの平日
▲「スープおかずの素」開発を担当したキッコーマン食品株式会社 プロダクト・マネジャー室 専用調味料グループ 青木健太郎氏
キッコーマン食品株式会社 プロダクト・マネジャー室 専用調味料グループ 青木健太郎氏によると、同商品を開発した理由は主に3つ。
(1)女性有業率の増加やシニア世帯の増加などに伴うライフスタイルの変化に伴い、夕食時に並ぶ皿数は減少傾向にあり、1皿で満足感のあるおかずが求められている
(2)肉や魚と野菜が一度にとれて、調理の時短にもなるスープおかずのレシピ本が増えている
(3)実際の食卓調査でも、具だくさんなおかずスープの食卓登場頻度は年々増加している
「こうした傾向から、トレンドのスープおかずの専用調味料にはチャンスがあると捉え、開発に着手しました」(青木氏)
「具だくさんの汁物」というとまっさきにイメージされるのは鍋もの。鍋つゆの素ならすでに市場は飽和状態だが、同社では「鍋」と「スープおかず」を明確に区分している。食卓の実態を調べたところ、下記のような特徴が分かったからだ。
・スープおかずは鍋よりも、「平日」の喫食率が高い
・鍋の食卓登場頻度が秋冬に偏っているのに対し、スープおかずは通年食べられている
「以上のことから、鍋との食卓実態が異なっていると判断し、平日、身近な食材で簡単に作ることができメイン料理になるスープおかずは需要があると考えました。平日・時間が無い時のお助け商品である『うちのごはん』と親和性も高いため、『うちのごはん』ブランドで展開することにしました」(青木氏)
スーパーでの売場も、鍋コーナーは春夏に縮小してしまうが、「うちのごはん」などが通年並ぶ「簡便調味料コーナー」に展開することで、季節問わず手に取ってもらえると考えたことも理由だそうだ。
正直、具だくさんのスープというだけなら、わざわざ専用調味料を使わなくても…と思わないでもなかったが、この専用調味料でなければ出せない味があることや、味が染みこむ速さがはっきり違うことなど、確かにこの商品を使うメリットを感じた。
取材・撮影・文/桑原恵美子
取材協力/キッコーマン食品株式会社