2016年に人気料理研究家の土井善晴氏が出したエッセイ集「一汁一菜でよいという提案」(グラフィック社)は、「一汁三菜」を理想とする家庭料理の呪縛を解く書として大ヒットした。だがこれからは、さらにミニマム化し「一汁でよい」時代が来るかもしれない。
近年、料理本で静かなブームになっているテーマが、具だくさんの主菜になるスープや味噌汁。醤油メーカーのヤマサも2023年秋冬の鍋つゆ発表会で、「家庭内での鍋料理は具材数が減り、汁物料理は具材数が増えている傾向にある。鍋物と汁物の境界が近づき、『汁物以上鍋物未満』といった新たな食べ方が増加している」と分析。
じつは筆者宅でもこうした料理本トレンドの影響うけ、今年の春から「具だくさん味噌汁」をメインとした献立に切り換えている。数種類の具をたっぷり入れると味噌汁だけでけっこう満腹になり、メインのおかずはごく簡単なものでよくなる。献立にも悩まなくなったし、食べ過ぎないので体調もよい。今までの揚げ物や炒め物などのボリュームたっぷりの主菜は、単に“目が欲しがっていた”だけだと気がついた。
そんなトレンドを反映し、キッコーマン食品(以下「キッコーマン」)が2023年8月7日に、新シリーズ「うちのごはん スープおかずの素」シリーズを発売した。
▲「キッコーマン うちのごはん」の新シリーズ「スープおかずの素」。左から「やわらか鶏とねぎの塩糀スープ」「とろける豆腐ごま白味噌スープ」「味しみミルフィーユスープ」各270円(税別)。2~3人分のスープおかずを作れる調味料の小袋2個入り
わが家も“具だくさん味噌汁”ライフが半年をむかえ、さすがにそろそろ飽きてきていた。秋冬の新商品説明会でこの新商品を知り、「これはいいかもしれない!」と直感し、さっそく試してみた。
「やわらか鶏とねぎの塩糀スープ」
「やわらか鶏とねぎの塩糀スープ」は、コク深い味わいの丸鶏だしと塩味まろやかな塩糀を合わせたスープで、生姜の風味をアクセントにしているという。2~3人前の調味液が2袋入っている。
1袋(2~3人前)で鶏肉150g。普通の鶏をメインにした鍋料理なら、2人前で300gほど使うので、その半分。毎日食べるという設定なので、これはありがたい。
長ネギ、白菜、大根、水200ml材料全てを入れて煮立ってから5分煮込むだけ。これだけで鶏肉が柔らかく、ジューシーに仕上がるという。日ごろ、2人分の汁物には400ml~500mlくらいの水を入れるが、その半分くらい。それに反して具はいつもの倍以上で、ぎゅうぎゅう。「本当にこれが汁物になるのだろうか」と一抹の不安が…。
5分で完成。野菜からの水分が出ているが、それでも「つゆだくの煮物」くらいのイメージ。不安は募る。
だが、お椀に盛り付けるとご覧のように、きちんと“具だくさんのおかずスープ”になった。なんだかマジックのよう。
スープは塩麹のやさしいうまみと鶏の出汁が効いていて、しみじみ美味しい。
これも塩麹効果だと思うが、鶏肉も野菜も、5分煮ただけとは思えないくらい、味が染みている。家人にも好評だった。そして具だくさんなので、スープがメインでもほどほどに満腹になった。