大王製紙が展開する衛生用紙製品ブランド「エリエール」からペットケア向けの新ブランド「エリエールPet キミおもい」が発表された。
「エリエール」は「やさしく触れていいですか」をブランドスローガンに掲げ、1979年にティッシュペーパー、トイレットペーパーを発売開始。現在ではベビー用紙おむつ「グーン」、生理用ナプキン「エリス」、大人用紙おむつ「アテント」、ウェットティッシュー「除菌できる」シリーズなどを展開している。
ブランド立上げから現在に至るまで品質にこだわった商品展開をする同ブランドがペットケア事業に参入するということで、どのような商品展開がされるのか、ブランドの強みはどのように活かされるのか、そしてペットケア市場全体への影響などが注目される。
本記事では2023年9月12日に行なわれた大王製紙「エリエール ペットケア事業 新ブランド発表会」の模様をレポートするとともに、ペット市場のトレンドを俯瞰してみたい。
国内売上高100億円を目指す“第3の柱”
一般社団法人ペットフード協会が実施した「2022年(令和4年)全国犬猫飼育実態調査」によると、2022年の国内のペット飼育頭数の推移としては2013年より10年間で犬は毎年微減傾向にあり2013年の871万4000頭から2022年には705万3000頭まで減少、猫はほぼ横ばいとなっている(2013年:840万9000頭→2022年883万7000頭)。
大王製紙代表取締役社長の若林賴房氏は、こうした背景を踏まえた上で「一方で近年、ペットは『愛玩動物』ではなく、家族のように生涯を過ごす『伴侶動物(コンパニオンアニマル)』に変化し、Pet Humanization=『人間化』のトレンドが進んでいる」と分析。
続けて「結果として、1頭あたりにかける毎月の飼育費は2017年と比較して2022年は犬用が約146%(2017年:9543円→2022年1万3049円)、猫用が126%(2017年5777円→2022年7286円)に増加しており、ペット用品の市場規模も伸長傾向にある」と強調した。
大王製紙はペットケア事業を衛生用紙、加工品(おむつ、フェミニンケア)に続く第3の柱として中長期的に育成し、2026年3月期末には国内売上高100億円の達成を目指している。
大王製紙代表取締役社長の若林賴房氏
北里大学獣医学部との産学連携で商品開発をし特許を出願
「エリエールPet キミおもい」は、北里大学獣医学部と共同研究により商品開発に取り組んでいる。
発表会では北里大学獣医学部学部長で医学博士でもある岡野昇三教授も登壇し、商品開発メンバーと共に新ブランド商品のひとつ犬用おむつ『のびのび動ける アクティブウェア』を例に挙げ、開発秘話を明かす場面もあった。
北里大学獣医学部学部長の岡野昇三教授
大王製紙ホーム&パーソナルケア部門国内事業部ペットケア事業本部マーケティング部の西井佳奈さん(左)と大王製紙ホーム&パーソナルケア部門商品開発本部グローバル商品開発第二部の本城良太さん(右)
本城 実際にオーナーさんはペット用おむつの機能を重要と感じる方が多い中、現実は満足度が低く、おむつずれに対するニーズが非常に高かった。当社には大人用やベビー用のノウハウでずれにくいおむつの工夫があったのですが、ワンちゃんは犬種や体型、体重で様々な形があり、おむつの開発に大きな壁に当たってしまった。
岡野 おむつのずれに対し、尻尾の太さ、尻尾と排泄腔の位置関係の相談を受け、北竿大学ではCT、MRI、医学検査施設等をいろいろと揃えています。そういった画像機器を用いて犬種ごとの体型データを集めさせていただきました。
それらのことから、体型と体重の関係性を見ると犬種が同じであれば、排泄腔と尻尾の位置は変わらず、一方で尻尾の太さは体重と相関することが分かったんです。
本城 ワンちゃんは千差万別と感じていましたが、犬種が同じであれば体重に寄らず、尻尾と排泄腔の位置は変わらないということが分かりましたので、長さ関しては2つのサイズで世の中の犬種をカバーできると確信しました。しかし、お腹周り(腹囲)の関しては犬種や体重で異なってくるので、調整機能を持たせる仕様で開発しました。
また、体重によって尻尾の太さが変わってくることから尻尾穴は4段階で調整できる機能搭載。
その結果、幅広い犬種、体型に対応できる商品を作り上げることができました。この機能は特許を出願し、日本で唯一のタイプの商品となっております。
新ブランドはペットオーナーの心を掴むことができるか
発表会の冒頭で若林氏が述べたように、ペットの飼育頭数の停滞に反し、近年、ペット市場の拡大は注目を集めている。その要因の一つに、ペットオーナーの意識の変化は間違いなくあるのだろう。ペットを「家族」として扱い、我が子同然にお金や時間を費やしたいと考えるペットオーナーも多い。
今後、この動向はさらに加速していくことが予想される。ペット市場は今後、これまで以上に消費者の目は厳しくなってくるだろう。
大王製紙がこれまで培ってきたノウハウ、クオリティはペットオーナーたちに受け入れてもらえるのだろうか。そして、他業種からの大企業参入はにわかに活気づくペット市場にさらなる活性化をもたらしてくれるのだろうか。新ブランド「エリエールPet キミおもい」にはぜひとも期待したい。
発表会では愛犬家でシンガーソングライターの絢香さんと愛猫家の古坂大魔王さんのトークセッションもあり、会場は大きな盛り上がりをみせた
【ブランド名】エリエールPet キミおもい
【商品内容】全5カテゴリー(猫用14商品、犬用17商品)
【発売日】2023年9月22日
【公式HP】https://www.elleair.jp/kimiomoi/about/
【公式Instagram】 https://www.instagram.com/elleairpet_kimiomoi_official/
【商品ラインナップ】
取材・文/峯 亮佑