「ジョブ型」導入状況は「導入はしていないものの慎重に検討中」が多数
次に、人事・評価・処遇制度の見直しを実施済もしくは実施の可能性がある企業(n=571)に「ジョブ型」の人事・評価・処遇制度の導入・検討状況について尋ねたところ、全社・一部を問わず何らかの形で導入している企業は2割超となった。【図2】
従業員規模別でみると、大企業は導入済の割合が高く、上記回答企業のうち約3割で導入がなされていた。中堅企業では「導入の予定はない」、中小企業は「検討していない」の割合が全体より高く、規模別で導入・検討状況に違いがみられた。
ただし、いずれの規模でも最も割合が高かったのは、「導入はしていないものの慎重に検討中」(42.4%)で、大企業、中堅企業、中小企業いずれもこの選択肢の割合が最も高いという結果となった。
【図2】「ジョブ型」の人事・評価・処遇制度の導入の状況・検討の有無
「ジョブ型」導入の主な目的は「職務・成果の明確化と適正な処遇の実現」
「ジョブ型」人事制度を導入している企業(n=126)に対して、導入の目的を尋ねたところ、「役割・職務・成果を明確にし、それらに応じた処遇を実現するため」が74.6%と最も高く、次いで「専門性の高い人材を育成・活用するため」(40.5%)、「社員のキャリア自律意識を高めるため」(37.3%)の順となった。【図3-1】
従業員規模別でみると、大企業は「事業構造やビジネスモデルの変化に対応するため」「外部労働市場を見据えた処遇を実現するため(グローバル標準の人事の実現を含む)」が全体より10ポイント以上高く、事業環境の変化、特に事業のグローバル化が「ジョブ型」導入の大きな要因となっていることが推察される。
一方、「ジョブ型」の人事・評価・処遇制度を検討中・導入の予定はない企業(n=379)に対してもその理由を尋ねたところ、最も高かったのは、「十分な検討が行われていないため」(56.2%)となった。【図3-2】
「ジョブ型」導入には、対象職種・職層の検討や設定、職務記述書の作成、旧来の雇用システムからどのように切り替えを行うか等、考慮・対応すべき要素が多くあるため、検討途上である企業が多いことが想像される。
その他には、「ジョブ型」よりもやや柔軟に運用できる役割等級制度のような制度が妥当と考えたため」(44.9%)、「異動などの人材配置において柔軟に運用することが難しいため」(43.8%)、「社員に対して職務を限定せず多様な経験を積ませることを重視しているため」(39.1%)が理由として挙がった。
【図3-1】「ジョブ型」の人事・評価・処遇制度の導入目的
【図3-2】「ジョブ型」の人事・評価・処遇制度を検討中・導入の予定はない理由
<「当面する企業経営課題に関する調査 日本企業の経営課題 -組織・人事編-」概要>
調査時期:2023年1月17日~2月10日
調査対象:JMAの法人会員ならびに評議員会社、およびサンプル抽出した全国主要企業(計4,000社)の人事部門の責任者
調査方法:郵送調査法(質問票を郵送配布し、インターネットにより回答)
回答数・回答率:回答数596社・回答率14.9%
出典元:日本能率協会
構成/こじへい