企業向け経済インフラプラットフォームを展開するStripe は、 2023年8月2日(水)に最新の決済トレンドやStripeの取り組みについて紹介するカンファレンス「Stripe Tour Tokyo 2023」を開催。
本イベントでは Stripe の今後の戦略や最新の決済・フィンテックトレンドについて発表した他、Stripeパートナー、ユーザーによる各種ブレイクアウトセッション、そしてスペシャルセッションとして 三井住友カード、ジェーシービー、Shopify Japanによるキャッシュレス決済の動向やトレンドについて様々な視点からディスカッションが行なわれた。
そして経済学者の成田悠輔氏、アニマルスピリッツCEOの朝倉祐介氏、Wellness Me CEO 森本智子氏による、インターネット経済の可能性についてのスペシャルセッションにて閉幕した。
インターネットの GDP を成長させるというミッションを持った Stripe の最新概況
イベントでは、この日のために来日した Stripe最高顧客責任者 (COO) のマイク・クレイヴィル氏が登壇。参加者に対して、次のように語った。
「当社にとって日本は重要な市場の一つであり、今後も顧客主義を最優先とし、日本企業の発展に貢献できる製品やサービスの開発にリソースを投資して参ります」
次に、営業・戦略を統括する Stripe 日本法人代表取締役の平賀充氏から、Stripe の使命でもある「インターネットの GDP 拡大」も踏まえ、現在のグローバル市場での動向について最新の数字も用いながら次のようなスピーチがあった。
「Stripe の使命はインターネットの GDP を拡大させることです。新型コロナが世界で発生する以前の 2019 年、Stripe のサービスを利用したユーザー企業は Stripe を活用して 2,160 億ドル (約 31 兆円) の収益を得ており、グローバルで毎週約 1,600 の新規ビジネスが Stripe を利用していましたが、さらに成長を続けており、本年度末には約 1 兆ドル (約 140 兆円) を超える収益を Stripe 上で決済処理することになる見込みです。加えて、現在では世界で約 4,600 の新規ビジネスが、週次で事業を開始しています」
さらに日本でのビジネスについて、「日本は Stripe にとって戦略市場です。2015 年にベータ版の提供を開始し、スタートアップから大企業まで現在では 10 万社以上の日本企業に Stripe のソリューションを活用していただいています。Stripe はこれからも皆様のビジネスの成長をしっかりとサポートさせて頂きます」とコメント。
最後に、同日に発表したデジタル貿易に関するレポートについて、「2022 年、国際的に販売を行う日本企業の数は 39% 増加しており、さらに約 8 割 (79%) が、今後 2 年以内に海外進出を計画しています」と紹介。日本企業のデジタル貿易への関心の高さを明らかした。
最新の決済トレンドと Stripe の今後の展望
続いてプロダクト・開発を率いる Stripe 日本法人代表取締役のダニエル・へフェルナン氏が登壇。Stripe が提供する最新のプロダクト情報および今後の展望について語った。
「世界中で新しい決済手段がどんどん増えていく中で、スマートフォン経由での E コマース、オンラインショッピングも急増しています。新しいビジネスモデルやチャンスが生み出される一方で、決済もますます複雑になっており、対応コストも高くなっています。そのため今後は消費者により”快適な決済体験”を提供することが重要なポイントになっていきます」
決済システムの導入を支援する Stripe のプロダクトについて、製品ポートフォリオの 3 つの主要な軸である、「グローバル決済プラットフォーム」、「埋め込み型の決済」、「収益・財務オートメーション」を中心に、デモンストレーションを交えながら紹介。
その中で、売上管理を自動化するワンプラットフォーム戦略や、プラットフォームビジネスを簡単に実現できる Stripe Connect についてのアップデートを発表した。
「Stripe は、決済フロー体験を改善することがオンラインビジネスで最も重要なビジネス指標であると考えています。Stripe Connect の新しい埋め込みコンポーネントは、自社のウェブサイトやアプリケーションに Stripe Connect の機能を、簡単に組み込める機能です。既存のサービスの UI を邪魔することなく、これまで以上に安全かつスムーズな支払い管理の環境を、簡単に構築できます。数年かけてイチから作るようなプロジェクトを、 1 人のエンジニアがたった数日で終わらせることも可能です」
他にも Stripe Terminal や Revenue Reporting など、今後日本で展開予定のサービスについても紹介。さらに今後のパートナーシップについても「 Stripe は、日本を含む全世界に、Stripe Data Pipeline における、Amazon Redshift と、Snowflake との連携を拡大します。近日中にリリース予定で、決算の締め処理や、効率のよいデータ分析が行えるようになります」と述べ、日本市場での展望について明らかにした。
日本の決済トレンドの今後と展望
イベントの後半で行われたスペシャルセッション(1)では三井住友カード株式会社常務執行役員 アクワイアリング本部長 疋田政彦氏、株式会社ジェーシービー 代表取締役兼専務執行役員 三宮維光氏、そして Shopify Japan 株式会社カントリーマネジャー 太原真氏に登壇いただき、キャッシュレス決済の動向や趨勢、注目している決済や消費トレンドについて様々な観点からディスカッションが行なわれた。
オンラインコマースの成長背景として、新型コロナウイルス感染症拡大の影響で生活習慣が大きく変化し、加えて日本では質の高い物流のインフラが整っていたことが進展に寄与したと解説。
その影響で D2C 販売が増加し、直販によるマージン削減や顧客データを可視化・蓄積することができるようになった。加えて、モバイルウォレット機能や BNPL (後払い決済) 等消費者の決済の選択肢が増えている中、それぞれの特徴を生かすことがオンラインコマースを更に発展させるためには重要だとの議論が行なわれた。
ユニファイドコマースについては、以前は店頭での POS レジが起点となっていたが、感染症拡大による人手不足や非対面ソリューションへのニーズが高まり、EC の需要が肥大化。
店舗と EC サイトの決済、在庫や売上管理等のシステムを一元化する必要性が生まれ、対面・非対面を融合するためのソリューションの必要性が高まっていることに言及しました。最後にシームレスな決済体験について、利便性、利得性、セキュリティが重要であり、決済体験の向上は収益に直結する上、認証技術が進むことは正確な顧客データの蓄積やセキュリティ技術向上にも繋がるため、正確な認証技術の開発がポイントになっていると結論付けた。
インターネット経済の進化と可能性について
Wellness Me CEO でアナウンサーの森本智子氏をモデレーターとして迎えたスペシャルセッション(2)では、経済学者の成田悠輔氏、シード・アーリーステージのベンチャー投資を行うアニマルスピリッツ CEO の朝倉祐介氏が登壇。
インターネット経済の現在と未来について両者ならではの視点でパネルディスカッションが行なわれた。
成田氏は、インターネットによる国家と市場の融合などについて言及。日本企業は成長と共に、人口減少下での存続のための双方のDX化が必要であると主張しました。一方、朝倉氏は、インターネットの急激な変化に目を奪われず、現場の DX 化やデータ利活用による新価値創出と労働力減少の課題解決を重視するべきと語った。
ブレイクアウトセッションにて様々な業界を代表する企業が登壇
ブレイクアウトセッション(1)では、大企業・スタートアップに分かれてそれぞれの観点から各種セッションを実施した。
大企業セッションでは、ANA X 株式会社 事業開発部部長 千歳敬雄氏、オリックス株式会社 デジタル戦略推進室長 長澤拓馬氏、トヨタ自動車株式会社 主任 中谷友昭氏、そして西本 Wismettac ホールディングス株式会社 シニアマネージャー 郷宗達氏が登場。
大企業として新規事業を立ち上げるにあたって抱えていた課題と、どのように Stripe を利用しながらその課題を乗り越えてきたかを、それぞれご紹介いただきました。また、スタートアップセッションでは、 STUDIO Inc CEO 石井穣氏、株式会社シェアダイン 共同代表 井出有希氏、oVice 株式会社 ジョン・セーヒョン氏、そして One Capital CEO 浅田慎二氏が登壇。現在の経済の荒波を乗り越える方法、スタートアップの成功要因について語った。
ブレイクアウトセッション(2)では、Chatwork 株式会社 執行役員 CTO 兼開発本部長 春日重俊氏、株式会社All Connect 執行役員 情報システム本部 本部長 前田知也氏が登壇。システム拡張を見越したデータ環境の統合や、見積もり・決済・請求の自動化を Stripe のワンプラットフォームで完結する、活用戦略について議論が行なわれた。
また、Accenture Song マネジング・ディレクター 正木哲也氏が登壇したセッションでは、決済の PDCA を通じて収益を増やす方法、優れた決済体験の構築について、実例を交えたディスカッションを実施した。
構成/清水眞希