パナソニックプロダクト解析センターが顔の映像から脳の健康状態を見える化する推定BHQ計測器を開発

「認知症」と「表情を作る能力」に一定の相関関係を確認

パナソニック ホールディングス プロダクト解析センター（以下、プロダクト解析センター）は、一般社団法人ブレインインパクト（以下、ブレインインパクト）の監修のもと、顔映像から脳の健康状態を示すBHQ（Brain Healthcare Quotient　※1）を推定する計測器を新たに開発。

セントラルスポーツが運営する「セントラルウェルネスクラブ24 葛西」に計測器を導入して効果検証を行ない、検証結果から脳の健康状態の可視化が利用者のモチベーションアップに効果があることを確認した。

※1 BHQ（Brain Healthcare Quotient）：MRI計測により、脳の健康状態をわかりやすい数値で示す、国際標準に承認されている指標。脳の健康状態を数値で示すことで、病気になる前の健康なうちから人々が脳の健康を管理できるように、内閣府ImPACT山川プログラムにて開発された。

図1 「推定BHQ」計測・アンケート回答イメージ（職員で撮影）

プロダクト解析センターでは、これまで人間の感覚や感情、身体への負担など、人のココロとカラダの状態を可視化・定量化するためのユーザビリティ評価技術を開発してきており、オリジナルの表情解析技術も有している。

一般に「認知症患者の表情は乏しくなる傾向がある」と言われている。そこで、「認知症」と「表情を作る能力」との間に何らかの相関関係があるのではとの仮説を立て、実証データの収集と推定精度の高い仕組み構築を進めてきた。

こうした中で、MRI計測によって導き出された数値と独自のアルゴリズムで解析した結果に一定の相関関係を確認できたことから、「推定BHQ」を計測する機器（以下、「推定BHQ」計測器）の開発を新たに行なったという。

「推定BHQ」計測器の概要

今回開発した「推定BHQ」計測器は、モニターに映し出された喜怒哀楽の表情を参加者にまねてもらい、その表情・感情の変化からBHQを推定する。

BHQはMRI計測による脳画像データから算出される指標だが、本機器では、短時間（計測時間は1分程度）で簡易にBHQの数値化体験を提供できるため、日常生活の中、公共のスペースにおいても利用が可能な機器となっている。

計測の流れ

（1）計測IDの入力
（2）モニターに表示される表情をまねる（練習1回、喜怒哀楽の4表情）
（3）計測結果表示（実年齢から想定されるBHQ値と計測した「推定BHQ」値の差分）
～推定した脳の健康状態を3段階（高／平均／低）でも表示～

図2 「推定BHQ」計測器 表示画面（上：表情をまねる　下：計測結果）

フィットネスクラブでの効果実証

セントラルスポーツ協力のもと、「セントラルウェルネスクラブ24 葛西」に機器を設置。脳の健康に良いとされる運動を日常的に実施しているフィットネスクラブ利用者に任意で推定BHQ計測とアンケート回答を依頼した。

実証結果（アンケート）

「推定BHQ」計測によって、「自身の脳の健康が可視化されることが、有益だと思う」と回答した人は、全体の76％だった。

また、有益だと回答した人のうち、9割が「脳の健康の可視化が運動意欲の向上につながる」として、8割は継続的に脳の健康状態を確認したいと回答した。

これらのことから、「推定BHQ」による脳の健康可視化が継続的な脳の健康把握と、運動モチベーションのアップに効果的であると考えられる。

図3 脳の健康可視化の有益性・運動意欲・継続利用に関するアンケート結果

プロダクト解析センターでは今回の結果に対して、「今後もBHQ推定技術の開発とBHQ改善施策のご提案を通して、人々の脳の健康状態を向上し、ウェルビーイングなくらしの実現に貢献します」とコメントしている。

調査概要
調査期間／2023年6月13日～6月21日
調査対象／セントラルウェルネスクラブ24 葛西の会員94名（女性は81％）
対象属性／平均年齢 67.3歳
調査方法／運動前後に「推定BHQ」計測、計測結果の説明、アンケート実施
アンケート内容／脳の健康状態可視化の有益性および可視化による運動意欲と継続利用、実施したフィットネスの種類、心理状態

関連情報
https://holdings.panasonic/jp/corporate/pac.html

構成／清水眞希