2023年上半期の倒産件数は4006件(前年同期3045件、31.6%増)となり、上半期としては6年ぶりに前年を上回った。
大型倒産も散見される中、民間ゼロゼロ融資の返済開始時期が今年7月に続き、2024年4月にピークを迎えることもふまえて、帝国データバンクでは与信管理を行っている全国の企業に「現在の与信管理マインド」や「与信管理の運用」に変化があるのかを2023年6月中旬から下旬にかけて調査を実施。約1000社からの回答をグラフにまとめて発表した。
4割の企業、「自社業界における信用不安や倒産の話を聞く頻度が増えた」
倒産が昨年5月以降14カ月連続で前年同月を上回っており、企業の実感も確認した。最近の自社業界における信用不安や倒産の話を聞く頻度に変化があるかを尋ねたところ、60.5%は「変わらない」としたものの、37.9% の企業で「増加」と回答があった。
また、現在の与信管理上、取引先の経営環境面で気になっていることは「原材料価格の高騰」が62.9%と最も多く、「人手不足」が48.7%、「エネルギー価格の高騰」が45.5%、「収益の回復」が41.0%で続いた。
実際に物価高や電気代、円安等によるコストプッシュ圧力も高まる一方で、価格転嫁出来ないことによる物価高倒産は2023年上半期において375件(前年同期85件、341.2%増)発生しており、企業が取引先の経営環境で最も懸念するものとして、特に『コスト高騰』を挙げる背景と一致している。
また、企業が取引先の経営環境で「収益の回復」を懸念する回答割合も高くなっている。売上高がコロナ禍以前の水準に戻った企業も、物価高で販売単価は上昇の反面、コスト増加分を販売価格へ適正に転嫁出来ず、収益悪化で先行きの見通しが立たなくなるケースも少なくないことが背景にある。
4社に1社が「与信管理を厳格化する方針」
取引先に対する与信管理方針や運用を変える予定があるかについては「以前と変わらない」が76.2%と最も多くなったものの、23.4%の企業は与信管理を厳しくする方針(「与信を非常に厳しくする予定がある(非常に厳しくした)1.5%」+「与信を厳しくする予定がある(厳しくした)21.9%」)と回答した。
取引先に対する与信管理方針や運用を厳しくする理由(自由回答・抜粋)
・不良債権発生
倒産事故が増加傾向にあり、これまで以上に厳しくしていく予定(鉄鋼・同加工品卸)
・支払遅延
支払遅延の発生件数が増加傾向(一般製材業)
・回収条件の悪化
回収条件が悪化傾向にあり、更には延滞債権発生率も同様に増加傾向にあり、資金繰り上問題があるため(土工・コンクリ工事)
・取引先の資金繰り状況
販売先全般の資金繰りが総じて厳しくなってきている背景から(他の樹脂製品加工)
・仕入コスト高騰
仕入原価高騰等による各取引先の収益状況が厳しさを増している事は間違いなく、従来よりも厳しい目で業況把握をする(舗装工事業)
・コロナ関連融資の反動
ゼロゼロ融資の返済時期が迫る中、取引先が地方の中小規模先だと事故時の対応がどうしても一拍遅れる危険性がある(各種商品卸)
・倒産発生状況
大企業でも倒産が見られているため、特に既存顧客向け与信枠を厳しくした。新規顧客は従来から厳しく行っていた(他の一般機械器具卸)
調査概要
調査対象企業/2023年1~2月に実施の与信管理実態調査で「与信管理を行っている」と回答した企業
調査実施期間/2023年6月14日~6月28日
調査回収件数/1065件(回収率:34.6%)
関連情報
https://www.tdb.co.jp/report/watching/press/p230709.html
構成/清水眞希