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⽕災保険は2024年に再び値上げ、専門家に聞く保険料改定の傾向と対策

2023.08.02

⽔災料率も市区町村の⽔災リスクに応じて細分化

損害保険料率算出機構は、⽕災保険の保険料の⽬安となる参考純率の改定について2023年6⽉、⾦融庁に届出を行なった。

参考純率の改定は、2014年以降最⼤となる全国平均で13.0%の引上げとなり、今後各社の⽕災保険料に順次反映される⾒込みだ。

こうした状況を踏まえ、ソニー損害保険(以下ソニー損保)から、ファイナンシャルプランナーの清⽔⾹氏による改定ポイントの解説レターが到着したので、その内容を一部抜粋して紹介していきたい。

2024年以降、⽕災保険料が再び改定される⾒通しとなった。⽕災保険料を決める際、損保各社が参考値とするのが、損害保険料率算出機構の提供する「参考純率」だが、これが2023年6⽉に改定され、全国平均で13%引き上げとなったからだ。

さらに、洪⽔や⼟砂災害といった⽔災リスクに対応する⽔災料率が、市区町村の⽔災リスクに応じて細分化される。

保険料が最も安い区分の1等地から、最も⾼い区分の5等地までの5区分のいずれかに各市区町村が区分され、市区町村ごとに保険料が変わる。

現⾏の⽔災料率は全国⼀律打が、改定後は最も保険料が⾼い地域と最も低い地域の間に補償危険の合計で約1.2倍の較差が⽣じ、今後は居住地の⽔災リスクに応じた⽕災保険料を負担することになる。

料率改定の理由は「⾃然災害の激甚化による保険⾦⽀払の増加」

参考純率が全国平均13%の引き上げとなった背景には、⽕災保険をめぐる事情が関連している。

気候変動の影響により、⾵⽔災が近年激甚化。毎年のように⼤きな被害が各地で発⽣し、多額の⾵⽔災保険⾦が複数年にわたり⽀払われている。こうした背景から⽕災保険収⽀は近年、恒常的な⾚字を余儀なくされてきた。

損害保険料率算出機構「2022年度版⽕災保険・地震保険の概況」

⼀⽅で、近年は築年数の古い⽼朽化住宅の割合が増加している。災害等で被害を受けやすかったり、事故が起きやすかったりするリスクの⾼い住宅が増えれば、災害による被害が増え、結果的に⽕災保険⾦の⽀払いが増えることにもなる。

併せて保険⾦として⽀払われる修繕費が近年上昇傾向にあることも挙げられる。建設⼯事費における資材費や労務費などが⾼くなれば、従前⽔準の保険料では、保険⾦⽀払いが困難になることも考えられる。

⽔災料率の細分化は公平性を担保し、納得して加⼊できる料率を⽬指す

⽔災による被害の遭いやすさは居住地により異なるが、⽔災料率はこれまで全国⼀律で、この点が保険料負担の公平性の上で課題とされていた。

⽔災リスクが低い場所に住む⼈と⾼い場所に住む⼈の被害を受ける確率は異なるのに、負担する保険料が同じでは不公平であり、リスクに応じた保険料を設定すべきとの指摘もあった。

他⽅、ハザードマップによる浸⽔被害等の情報提供が近年充実してきたなかで、⽔災補償を付保する世帯の割合は減少している。

とりわけ、ハザードマップ上の浸⽔深が浅い地域で減少幅が⼤きくなる傾向がある。

しかし、たとえ浸⽔深が浅くても、ひとたび住宅が浸⽔すれば被害は甚⼤なものになる。近年の気候変動の下、予測を超えた災害が⽣じれば、誰もが被害を回避できなくなるおそれもある。

だからこそ、より多くの⼈が⽔災補償を付帯し、⽔災に備えていることが重要だ。その意味でも、保険の公平性を担保し、誰もが納得して加⼊できる保険料率を提供するため、細分化が⾏なわれることになったのだ。

2024年から改定される保険料を事前に把握するためのチェック項⽬

私たちが実際に負担する保険料は、来年以降各損保会社から提⽰されることになるが、そのときの保険料の傾向は、参考純率の改定率である程度知ることができる。

⽕災保険料は、建物構造と居住地、さらに築年数で異なる。建物は、構造別にM構造(マンション)、T構造(⼀定の耐⽕構造の建物)、H構造(MおよびT構造以外)の3つに区分され、各市区町村は1〜5等地の5つの⽔災等地に区分される。該当する建物構造と市区町村の組み合わせ、さらに築年数が加味され適⽤される料率が決まる。

率をみると、⼀部を除きおおむねプラス数%〜30%程度のアップ改定となっており、全体としては引き上げであることがわかる。

具体的には、居住する市区町村の等地区分に応じて保険料は変わり、5等地の保険料は1等地の約1.2倍になる。

東京都を例にみると、もっとも保険料が⾼くなるのが5等地の江東区、荒川区などで、次いで4等地の中央区、3等地の⼤⽥区、板橋区など、2等地の港区、品川区などです。もっとも保険料が安くなるのは1等地で、世⽥⾕区、⼋王⼦市などが該当する。

この等地区分は参考純率を届け出た時点のリスク評価によるものであり、今後変わる可能性がある。したがって、住所地そのものの災害リスクを知るには、市区町村のハザードマップを確認しておきたい。

ハザードマップは、想定した⼀定の⾃然災害で⽣じる被害の範囲を地図で⽰したもの。洪⽔や内⽔氾濫、⼟砂災害、⾼波や噴⽕など地域の災害特性に応じたハザードマップを市区町村が作成して住⺠に配布しており、市区町村のウェブサイト上でも確認できる。

納得できる保険料で、安⼼して⽕災保険で備えるためのポイント

1. 保険期間を⻑くする

⽕災保険期間は1〜5年の間で選択できるが、同じ補償内容であっても保険期間が⻑いほど保険料が抑えられる。

2. 保険料はまとめて⽀払う

同じ保険期間5年でも年1回を5年にわたり⽀払うより、5年分を⼀括払する⽅が保険料の総額は抑えられる(※)。より⻑い保険期間で、かつできるだけ保険料をまとめて⽀払えば、補償内容を変えなくても保険料を抑えられる。
※ 保険料が5年間変わらない場合

3. 補償や特約の取捨選択

補償範囲が広いほど⽕災保険料は⾼くなり、絞り込むほど安くなる。ただし、⽣活基盤に深刻な影響がおよぶ⽔災や⾵災の補償は、優先的に検討したうえで絞り込みたい。

解説/清⽔⾹ 氏
1968年東京⽣まれ。⼤学在学中より⽣損保代理店業務に携わるかたわらファイナンシャルプランニング業務を開始。2001年、独⽴系FPとしてフリーランスに転⾝。家計の危機管理の観点から、社会保障や福祉、⺠間資源を踏まえた⽣活設計アドバイスに取り組む。近著「どんな災害でもお⾦とくらしを守る」(⼩学館クリエイティブ) CFP認定者/FP1級技能⼠/社会福祉⼠

関連情報
https://www.sonysonpo.co.jp/fire/

構成/清水眞希

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