2023年前半における世界株式市場の動きを踏まえ、年後半はどんな動きが予想できるのだろうか?
三井住友DSアセットマネジメントはこのほど、チーフリサーチストラテジストの石井康之氏による「2023年前半は新興国株が先進国株に対し出遅れ 年後半も選別投資、インドやベトナムに注目」と題したマーケットレポートを公開した。
23年前半は新興国株が出遅れ
2023年上半期の世界株式市場は、米欧の金融不安が一時高まったものの、米景気が予想を上回る底堅さを示したことでソフトランディングへの期待が高まり、投資家がリスク選好姿勢を強めたため、極めて好調だった。MSCI世界株価指数(ドルベース)のリターンは、2022年末比+14.3%となった。
ただ、世界株価指数の内訳をみると、先進国株に対する新興国株の出遅れが目立っている。先進国株価指数の同+15.4%に対し、新興国株価指数は同+5.1%にとどまり、大きく見劣りした。
2023年前半に新興国株が出遅れた要因として、中国経済の回復が期待を下回ったことや、米欧金融の動揺で市場の安全志向が強まったこと、人工知能(AI)ブームをきっかけに先進国を中心に関連株が大きく上昇したことが挙げられる。
新興国株はまちまち、中国が低迷
新興国株のリターンを国別にみると、まちまちなことがわかる。中国株は、ゼロコロナ政策終了に伴う経済再開の勢いが鈍化したことや米中関係の悪化が嫌気された。指数全体の3割を占める中国株が2022年末比▲5.4%と下落したため、新興国株全体を押し下げた。
一方、AIブームの恩恵を受けた台湾株、韓国株は同+20.4%、同+14.6%と堅調だった。ブラジル株も、通貨高や景気回復期待から同+17.0%と大きく上昇した。新興国のなかでもファンダメンタルズや成長期待から選別投資が行われていたことがわかる。
年後半も選別投資、インドやベトナムに注目
市場では、米連邦準備制度理事会(FRB)の利上げが最終盤に差し掛かっているとみる向きが多いため、投資家のリスク選好姿勢が続きそうだ。昨年とは異なり、ドル高が一服していることで、バリュエーション(投資尺度)の面から出遅れている新興国株が見直される可能性がある。ただし、そのなかでもファンダメンタルズや成長期待に基づいた選別投資は続くとみられる。
今後の新興国株の注目点として、グローバル企業が、中国に加えて別の国にも生産拠点を確保する「チャイナプラスワン」の加速を指摘できる。
その代表格が、インドとベトナムだ。足元では、電気自動車(EV)大手テスラや米半導体大手マイクロン・テクノロジーなど多くの米企業がインドへの積極的な投資を表明している。また、韓国の電子部品大手LGイノテックがベトナムの工場増設を発表するなど、チャイナプラスワンの動きが勢いを増している。
今後インドやベトナムへの直接投資は一段と拡大することが見込まれ、中長期的に経済成長率を押し上げるとみられる。
チャイナプラスワンの加速に加え、生産年齢人口が増加するインドやベトナムは、内需拡大による経済成長も見込まれる。投資マネーがインド株や「シン・新興国株(フロンティア株)」のベトナム株に流入することが期待される。
※個別銘柄に言及しているが、当該銘柄を推奨するものではない。
出典元:三井住友DSアセットマネジメント
構成/こじへい