リスクへの備えは「従業員の安否確認手段の整備」が68.2%でトップ
BCPについて『策定意向あり』とする企業に対して、事業が中断するリスクに備えて実施あるいは検討している内容を尋ねたところ、「従業員の安否確認手段の整備」が68.2%で最も高かった。(複数回答、以下同)。以下、「情報システムのバックアップ」が57.1%、「緊急時の指揮・命令系統の構築」が41.0%で続いた。
「大企業」では従業員の安否確認や情報システムの管理などの備えを重視し、「中小企業」では「調達先・仕入先の分散」や「代替生産先・仕入先・業務委託先・販売場所の確保」といったサプライチェーンに関する備えが「大企業」と比較して高かった。
BCPを策定していない理由はスキル・ノウハウの不足、人材確保できないが上位に
BCPを「策定していない」企業にその理由を尋ねたところ、「策定に必要なスキル・ノウハウがない」が42.0%で最も高かった(複数回答、以下同)。以下、「策定する人材を確保できない」が30.8%、「策定する時間を確保できない」が26.8%で続いた。
「大企業」では「策定する人材を確保できない」(36.4%)などリソース不足によって策定できないと考える企業が「中小企業」と比較して高かった。一方、「中小企業」では「必要性を感じない」(21.6%)が「大企業」と比較して7.2ポイントも高かった。
BCP策定への取組みに対する意識や優先順位が下がる傾向に
本調査の結果、BCPについて、『策定意向あり』とする企業の割合は48.6%にとどまり、新型コロナウイルスの感染が拡大し始めた2020年をピークに3年連続で低下した。新型コロナウイルス感染拡大というリスクが表面化したことで一時的に企業の取り組み意識が高まったが、時間の経過とともに相対的に優先順位が低下してきたようだ。
BCPを策定するなかで想定するリスクとしては、「自然災害」が最も重要視されているほか、「設備の故障」や「感染症」、「情報セキュリティ上のリスク」を想定している企業も多い。その備えとして「従業員の安否確認手段の整備」や「情報システムのバックアップ」といった人的資源や知的財産の保護を目的としたものが高い傾向にあった。
一方で、BCPを策定していない企業では、「策定に必要なスキル・ノウハウがない」ことを理由にあげる企業が4割超に及んでいる。そのほか、策定する人材や時間を確保できないと考える企業の割合も高いことが策定への大きな障壁となっているようだ。
ポストコロナに向けて経済活動が加速していくなか、BCP策定への取組みに対する意識や優先順位が下がる傾向がある。しかし、BCPの準備を怠ることで経済活動に与えるマイナスの影響は大きく、企業、行政が連携して対策を講じていくことが求められよう。
<調査概要>
調査対象:全国2万7,930社で、有効回答企業数は1万1,420社(回答率40.9%)
調査期間:2023年5月18日~5月31日
調査機関:株式会社帝国データバンク
出典元:株式会社帝国データバンク
構成/こじへい