「過去の成功・失敗体験」から自由になるテクニック
私たちは、時に過去の体験にとらわれてしまって、判断を誤ってしまうことがあります。失敗体験ばかりでなく、成功体験にしがみついて失敗することもあります。
「あのとき、ああできたから、今回もできる」となってしまいます。
たとえば、老しにせ舗と呼ばれるようなお店が、時代的に古くなってしまった商品にこだわり続けてつぶれてしまう例もあります。
恋愛で、過去に付き合った人に固執してしまって、本当に自分が望んでいるパートナーに巡り会えなくなってしまったり、スポーツで過去の成功したプレーにこだわることで、結果うまくいかないケースなど……過去の体験にとらわれることで、うまくいかないことは多々あります。
脳には、「現状維持バイアス」があります。人には、「今の状態であり続けたい」と思う傾向があるということです。これに支配されてしまうと、視野が狭くなり、本当は得られたはずのチャンスを逃すことになるかもしれないのです。
「できる」と言ってしまうと、脳は「できる」ことばかりにフォーカスして、それ以外の情報を見ようとしなくなってしまいます。
そんなときは、
「できるではなく、できるだろうか?」
という「脳内トーク」を使ってみてください。なんだか哲学的な問いかけですが、これが効きます。
私たちの脳は、問いかけられると、左脳半球だけでなく右脳半球まで活性化することがわかっています。その結果、狭かった視野が広がり、過去に成果が得られた方法よりもよい方法が見つかる可能性も広がるのです。
また、問いかける型の「脳内トーク」をすることで、パフォーマンスそのものを高める効果もあります。
米国のイリノイ大学で行われたこんな実験があります。
① 参加者にアナグラムという10個の言葉のパズルを解かせる
② 「私は、これをやり通せるだろうか?」と自分に問いかけるグループと、「私は、これをやり通せる」と自分に語りかけるグループに分ける
その結果、肯定形の「脳内トーク」をするよりも、「私は、これをやり通せるだろうか?」と、疑問形にしたグループのほうが、1.5~2倍もアナグラムを解いたという結果がでました。
つまり、「できるだろうか?」と問いかけると、前例よりもよい方法を見つけられるだけでなく、脳のパフォーマンスすら高めることができるのです。
視野が広がり、幅広い解決策を得ることができながら、脳を活性化させることで、脳の遂行能力まで高めてくれる。だからこそ、「できるではなく、できるだろうか?」は、素晴らしい「脳内トーク」の1つなのです。
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いかがでしたでしょうか? 成功者と呼ばれる人たちは、「脳内トーク」を意識的に活用しています。「脳内トーク」を使って、脳をよい意味で騙し、自分の常識(思い込み)を打ち破る。そして、視点を増やす 。成功者たちの多くが、 「脳内トーク」を活用して、自分を変えてきた人たちなのです。
「人生を変えるためには、大きなことをしなければならない」 、多くの人がそんな常識を信じています。しかし、研究からわかったことは、私たちは大きなことをする必要はないということでした。日々の小さなことが、物事のとらえ方や行動をはじめ、能力や性格、さらには健康、習慣、パフォーマンスにまで影響を与えるということです。そして、そのベースになるのが、 「脳内トーク」なのです。
自分を変化させて、なりたい自分に近づいていくためのより詳しいヒントは「世界一やさしい自分を変える方法」をチェックしてみてください。
「世界一やさしい自分を変える方法」
著者/西 剛志
発行/株式会社アスコム
著者/西 剛志(にし・たけゆき)
東京工業大学大学院生命情報専攻卒。博士号を取得後、特許庁を経て、2008年にうまくいく人とそうでない人の違いを研究する会社を設立。世界的に成功している人たちの脳科学的なノウハウや、才能を引き出す方法を提供するサービスを展開し、企業から教育者、高齢者、主婦など含めてこれまで1万人以上に講演会を提供。エビデンスに基づいた研修、商品開発サービスなども全国に展開。テレビやメディアなどにも多数出演。著書シリーズは海外でも出版され「80歳でも脳が老化しない人がやっていること」(アスコム)をはじめとして累計22万部を突破。
脳科学者 西剛志公式サイト
https://nishi-takeyuki.com