「ダイエットしたいと思いながら、つい食べすぎてしまう」「忙しすぎて、自分のやりたいことをする時間がもてない」「相手にハッキリ言うことができず、ストレスを感じた」「ついスマホを見すぎて、時間をムダにしてしまった」など、思いどおりにいかない自分に苛立だったり、自分を責めたりしたこはないでしょうか?
日々の生活の中で、意志が弱く、なかなか思いどおりにいかないことってありますよね。でも、実は自分を変えることができるかどうかに、意志が強いか弱いかは関係ないそうです。
意志の力に頼るのでなければ、どうしたらいいか。その答えは「言葉の力」を利用することだそうです。人は1日の中で、自分との会話「脳内トーク」を何千回から何万回も行っていると考えられています。つまり、脳は「脳内トーク」の影響を多大に受けているのです。
それなのに私たちは他人と話す技術は学ぼうとするのに、なぜ自分と話す技術は学ばないのでしょうか? 今回は最新の研究データに基づき、誰でも簡単に「脳内トーク」を変えられる方法を、わかりやすく解説した脳科学者の西 剛志さんの著書「世界一やさしい自分を変える方法」の中からDIME読者におすすめしたいノウハウを厳選、再編集してお届けします!
「脳内トーク」の技術を駆使して、脳をよい意味で騙し、自らを成功へと導いてください。
創造性が高い人たちがしている「問いかけ」という脳内トーク
2020年以降、人工知能(AI)の発展がめざましく、社会の構造すら変わってしまうかもしれない時代とも言われています。
ミシュランの寿司名人の技術をAIが学習して、名人と同じように握るロボットが開発されたり、運転手がいなくても自動で運転できたり、単純な作業はそのほとんどがロボットやAIなどの機械に代替されてしまうと予想されています。
そんな中、注目されているのが、「創造力」(クリエイティビティ)です。AIは、既存のパターンを組み合わせて判断したり、ものを創り出すことはできますが、入力されていない情報から、新しいものを創造することができません。
そして、AIは問いも考えることができません。問いを考えることができるのは人間だけです。
では、人はどのようにして、ものを創造しているのでしょうか。
以前研究で、創造性が高い人たちの発想のしくみについて調べたことがあるのですが、彼らは次の4つのステップで、創造的なアイデアを生み出していることがわかってきました。
STEP1:たくさんの知識を取り込む
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STEP2:「脳内トーク」をする
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STEP3:休憩を入れる
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STEP4:出てきた答えをメモする
もっと詳しく見ていきましょう。
STEP1:たくさんの知識を取り込む
私は以前、特許庁で世界中の発明に触れる仕事に携わってきました。その中でわかったことがあります。
それは、どんな素晴らしい発明であったとしても、まったくのゼロの状態から生まれる発明は1つもなかったということです。
たとえば、鉛筆と消しゴムを組み合わせると、「消しゴムつき鉛筆」となります。
インターネットと携帯電話を合わせると「スマートフォン」、AIと車をかけ合わせると「自動運転車」となります。このように世の中の発明は、既存のアイデアの組み合わせてできているのです。
なので、知識量が少ない状態でいくら考えても、素晴らしいアイデアはなかなか出てきません。
子どもの研究で、おもちゃを渡すとどのくらい創造性のある遊びを行うか、という実験があります。結果、子どもにそのままおもちゃを渡すよりも、事前に「このおもちゃでどのような遊び方があるか」というレパートリーを見せてあげたほうが、それらを組み合わせて創造的な遊びをする子が増えることがわかりました。
まずは、たくさんの知識を取り込んでいくプロセスが、創造性を高める第一歩になります。
STEP2:「脳内トーク」をする
創造的なアイデアを生み出すときに、いちばん重要なのがこのSTEP2です。
STEP1では、たくさんの情報をインプットする大切さを説明しましたが、情報をインプットしただけでは不十分です。
畑に種をいくらまいても、水や栄養などを与えなければ芽が出ないように、情報を集めるだけではなく、脳に自分がほしい結果を得るための「問いかけ」の「脳内トーク」をしておくことが大切です。
たとえば、目の前に、4つの材料(「リンゴ」、「つまようじ」「ナイフ」、「紙ナプキン」)があったとします。これらで何をしてもよければ、ただリンゴをナイフで剥いて食べることだけを考える人もいるかもしれません。
しかし、事前に「お城をつくる」と「脳内トーク」しておくと、どうでしょうか。ナイフでリンゴの形を整えて建物のようにしたり、つまようじを刺して格子や窓をつくったり、ナプキンを旗に仕立てるかもしれません。
つまり、「脳内トーク」で「あるべきゴール」を設定しておくと、「注目バイアス」(注目したものが目に入ってくる脳の性質)の作用で、脳はゴールにフォーカスしはじめるのです。そのゴールを実現するために、脳はアイデアをどんどん出してくれるようになります。一度脳に問いかけておくことで、材料そのものに対する考え方や活用法まで変わってしまいます。
どんなに小さくても、目的をセットしておくだけで、脳は自動的にそのゴールを実現するアイデアを考えやすくなります。
具体的にはこんな感じです。これは、私がやっている方法です。
たとえば、クライアントから研修などのオファーが来たとき。まず、企業やテーマに関するあらゆる資料を集めて、すべてに目を通したら、自分に向けてこう質問します。
「クライアントに最高の結果をもたらすには、どうすればよいだろう?」
「どんな人にも理解しやすい構成にするためには、どうすればいいだろう?」
自分がほしい結果を得るための「脳内トーク」です。
そして、そのまま、ラウンジやカフェに行ったり、温泉に行ったり、オフィスで海を眺めたり、家族と食事をしたり、子どもと遊んだり、まったく違うことをします。
なぜそうするか、その理由を次に述べたいと思います。
STEP3:休憩を入れる
創造性を生むために重要な要素の3つ目が、「脳がリラックスすること」です。
たとえば、制限時間を設けて「今から1分以内で、創造的なアイデアを出してください」と言われたら、どうでしょうか。相当なプレッシャーで、重圧に押しつぶされそうになるかもしれません。
実際に、米国ハーバード大学の研究でも、過度な緊張は創造的なアイデアが生まれるのを45%も減少させることがわかっています。
創造性の実験で興味深いものがあります。
2006年にオランダのアムステルダム大学で行われた、パスタの新しい商品名を出してもらうという実験です。
1つ目のグループには、3分間真剣に考えてもらったあとに、商品名をノートに書き出してもらいます。
2つ目のグループには、商品名を考えてほしいと伝えたあとに、3分間考えるのではなく、「パソコンのマウスを3分間クリック」してもらいました。
その結果、どうなったかというと、途中で3分間「パソコンのマウスをクリックしてもらった」グループのほうが、明らかに独創的な商品名が出てきたのです。
つまり、アイデア出しとは関係ないことをしたほうが、創造的なアイデアが出てくることがわかりました。
なぜ、こんなことが起きるのでしょうか。それは、脳はロジカルに考えすぎると、思考の幅が狭くなってしまうからです。創造性には幅広い視野が必要です。
ですので、創造的なアイデアがほしかったら、一度アイデア出しをやめてみることが大切です。
作業をやめたり、休憩しているとき、脳は何もしてないわけではなく、広く活性化しています。これを、専門用語で「デフォルトモード・ネットワーク」と呼びます。また「マインド・ワンダリング」とも呼ばれ、脳が現在や過去よりも「将来」にフォーカスしやすく、客観的に物事を見るため、よいアイデアが出やすい状態になることが知られています。
ですから、いすに腰かけてコーヒーをゆっくり飲んでいるとき、友人とおしゃべりしているとき、入浴中など、心がリラックスしている時間をとることは、とても大切なんです。ふっとアイデアがわいてきたりします。
創造性は、休んでいるときほど生まれるものなのです。
STEP4:出てきた答えをメモする
「これは、我ながらいいアイデアだな」と、心の中でニヤリとしつつ、そのままにしていると、あっという間にそのひらめきを忘れてしまった。あんなにいいアイデアだったはずなのに、思い出せない……なんてことはないでしょうか。
ふと出てきたアイデアは、通常、短期記憶力(ワーキングメモリ)といって、意識的な記憶として脳の前頭前野に保存されます。
しかし、記憶できる限界は20~30秒くらいです(人によっては、それ以下とも言われます)。寝起きに出たアイデア、歩いているときに出たアイデアを、そのままにしていると、ほとんどが記憶から失われてしまうのです。
ですので、よいアイデアが出てきたときは、すぐにメモすることです。
メモすることは、自分との対話にもなります。スマートフォンのメモ機能やアプリを使って、その場でサラッとメモをとるだけでも大丈夫です。
ビル・ゲイツは、メモ魔として有名です。本を読んでいるときにも、出てきたアイデアを余白にビッシリ書き出すそうです。
ほかにも、レオナルド・ダヴィンチ、エジソン、アインシュタインも、日常的にメモをよくする習慣があったそうです。
私は、1993年にノーベル生理学・医学賞を受賞したフィリップ・シャープ博士と会ったことがあるのですが、デスクにたくさんのメモ書きがあり、やはり「できる人はメモをよくとるんだな」と実感しました。
「知識を得る」→「脳内トークをする」→「休憩をする」→「メモする」……1つ1つは意外なほどシンプルなステップですが、これを連動させることの効果は想像以上です。気づいたら、あなたの創造力は、火をつけたロケットのようになるかもしれません。
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いかがでしたでしょうか? 成功者と呼ばれる人たちは、「脳内トーク」を意識的に活用しています。「脳内トーク」を使って、脳をよい意味で騙し、自分の常識(思い込み)を打ち破る。そして、視点を増やす 。成功者たちの多くが、 「脳内トーク」を活用して、自分を変えてきた人たちなのです。
「人生を変えるためには、大きなことをしなければならない」 、多くの人がそんな常識を信じています。しかし、研究からわかったことは、私たちは大きなことをする必要はないということでした。日々の小さなことが、物事のとらえ方や行動をはじめ、能力や性格、さらには健康、習慣、パフォーマンスにまで影響を与えるということです。そして、そのベースになるのが、 「脳内トーク」なのです。
自分を変化させて、なりたい自分に近づいていくためのより詳しいヒントは「世界一やさしい自分を変える方法」をチェックしてみてください。
「世界一やさしい自分を変える方法」
著者/西 剛志
発行/株式会社アスコム
著者/西 剛志(にし・たけゆき)
東京工業大学大学院生命情報専攻卒。博士号を取得後、特許庁を経て、2008年にうまくいく人とそうでない人の違いを研究する会社を設立。世界的に成功している人たちの脳科学的なノウハウや、才能を引き出す方法を提供するサービスを展開し、企業から教育者、高齢者、主婦など含めてこれまで1万人以上に講演会を提供。エビデンスに基づいた研修、商品開発サービスなども全国に展開。テレビやメディアなどにも多数出演。著書シリーズは海外でも出版され「80歳でも脳が老化しない人がやっていること」(アスコム)をはじめとして累計22万部を突破。
脳科学者 西剛志公式サイト
https://nishi-takeyuki.com