「ダイエットしたいと思いながら、つい食べすぎてしまう」「忙しすぎて、自分のやりたいことをする時間がもてない」「相手にハッキリ言うことができず、ストレスを感じた」「ついスマホを見すぎて、時間をムダにしてしまった」など、思いどおりにいかない自分に苛立だったり、自分を責めたりしたこはないでしょうか?
日々の生活の中で、意志が弱く、なかなか思いどおりにいかないことってありますよね。でも、実は自分を変えることができるかどうかに、意志が強いか弱いかは関係ないそうです。
意志の力に頼るのでなければ、どうしたらいいか。その答えは「言葉の力」を利用することだそうです。人は1日の中で、自分との会話「脳内トーク」を何千回から何万回も行っていると考えられています。つまり、脳は「脳内トーク」の影響を多大に受けているのです。
それなのに私たちは他人と話す技術は学ぼうとするのに、なぜ自分と話す技術は学ばないのでしょうか? 今回は最新の研究データに基づき、誰でも簡単に「脳内トーク」を変えられる方法を、わかりやすく解説した脳科学者の西 剛志さんの著書「世界一やさしい自分を変える方法」の中からDIME読者におすすめしたいノウハウを厳選、再編集してお届けします!
「脳内トーク」の技術を駆使して、脳をよい意味で騙し、自らを成功へと導いてください。
思考がさらに深まるプラスαの視点
ここでは、さらに思考を深めるための視点を6つ紹介します。自在に操れるようになれば、かなり応用が利く「脳内トーク」ができるようになっていくと思います。
比較の視点
2022年の、住みたい街ランキングでは「横浜」が5年連続1位だったそうですが、もしあなたがこんなことを聞かれたら、なんと答えますか。
「横浜が、住みたい街ランキング1位になった理由を説明してください」
この問いには、次のような答えが出てくる可能性があります。
「横浜は、海が見えるというイメージが快適さを感じさせるのでは?」
「都心に近いから人気なのでは?」
もちろん、これらの答えは1つの可能性ではありますが、これだけでは説明できないことがあります。
なぜなら、先ほどの2つの条件「海が近い」+「都心に近い」を同時に持つ都市として知られる、千葉県「海浜幕張」のランキングは74位だからです。もしこの2つの条件が必須だったら、海浜幕張も当然上位に入るでしょう。
つまり、ほかに大切な理由があることが予想できるのです。
今回の質問を多くの人にしてみたのですが、適切な答えが出てこない人の多くは、こんな「脳内トーク」をしていました。
「なぜ、横浜は1位になったのだろう?」
もちろん、悪い「脳内トーク」ではありません。ただ、これでは問いかけている範囲があまりにも広い(いろいろな可能性が考えられる)ため、脳は適切な答えを絞りきることができません。
しかし、思考が深い人は、こんな「脳内トーク」をする傾向があります。
「横浜と他の都市(たとえば、海浜幕張)の違いはなんだろう?」
すると、どうでしょう。このように、2つを比較して具体的にその違いを探そうとすると、「横浜は、まず駅ビルの数が圧倒的に多い」「横浜は、複数の路線が乗り入れているから、どこに行くにも便利」「横浜のほうが、コンビニやスーパーの数が圧倒的に多い。だから生活の利便性が高い」などの違いが出てきます。ほかにもいろいろな要素が出てくる可能性があります。
「AとBの違いは、なんだろう?」
私はこれを「比較の脳内トーク」と呼んでいます。
脳には「コントラスト効果」といって、物事を比較することで、その違いをより大きく見せる性質があります。1つの対象だけを考えるよりも、2つのものを比較することで、大切な違いがより浮き彫りになって見えてくるようになるのです。
だから、「スシローの特徴はなんだろう?」と考えるよりも、「スシローと、くら寿司の違いはなんだろう?」と考えたほうが、より速く正確な答えを導くことができます。
物事を関連づける視点
思考を深める大切な要素の1つとして、物事を分析する力があります。この、分析する力も「脳内トーク」から生まれます。
たとえば、一時期、コンビニで「バスクチーズケーキ」という商品が大ヒットしました。その「ヒットの理由を分析してください」と言われたら、あなたはどうしますか。
多くの人が、こう「脳内トーク」するかもしれません。
「バスクチーズケーキは、どうして売れたんだろう?」
これも「比較の脳内トーク」でお伝えした例と同じですが、考えなければいけない幅が広すぎて、答えがすぐには出てこない人もいるでしょう。コンビニでヒットしたスイーツは、バスクチーズだけではなく、「マリトッツォ(イタリアのスイーツ)」「カヌレ(フランスのスイーツ)」「トウファ(台湾の豆腐のようなスイーツ)」などもあります。
うまくいく人は、「AとBに共通することはなんだろう?」という視点を使って、こう「脳内トーク」します。
「バスクチーズケーキと、ほかのヒット商品(「マリトッツォ」「カヌレ」「トウファ」など)の共通点はなんだろう?」
すると、「海外」というキーワードが浮かんでくるかもしれません。
1つの視点だけで考えるよりも、複数の事例に共通することを考えると、本質につながる深い考えが出てくることがあります。私はこれを「つながりを探す脳内トーク」と呼んでいます。
私は人の普遍的なしくみを考えるとき、たとえばこんな「脳内トーク」をします。
「仕事でも、スポーツでも、恋愛でも、うまくいく人に共通することはなんだろう?」
出てくる答えは、かなりの確率で人の本質をとらえた原理原則で、そこから大きな発見があります。
これは、分析が得意になってしまう、魔法のような「脳内トーク」です。
優先順位の視点
これから、あなたに料理をしてもらいます。野菜を煮込む料理です。次の4つの食材をそれぞれ鍋に入れて、最短で美味しい料理をつくってください。
① エノキ (煮込むのに必要な時間:1分)
② カボチャ (煮込むのに必要な時間:10分)
③ ニンジン (煮込むのに必要な時間:6分)
④ キャベツ (煮込むのに必要な時間3分)
では、どのような順番で煮ると、最短で煮込めるでしょうか。そして時間は何分かかりますか。
答えは、「最初にカボチャ→ニンジン→キャベツ→エノキ」の順番で、合計10分かかります。この順番でタイミングよく入れると、最高に美味しい料理ができます。
なぜ、こんなことを話しているかというと、この問題に答えられた人は、「ある脳内トーク」をしている可能性があるからです。
それは「この食材の中で、何がいちばん時間がかかるんだろう?」(最短で煮込むために、何がいちばん大切なんだろう)という「脳内トーク」です。
これは、仕事でも同じことが言えます。仕事では、やるべきことはたくさんありますが、なんでもがむしゃらにやれば必ずいい結果が出るわけではありません。どんなに時間をかけて努力しても報われない……という人もいるでしょう。
一方で、ラクしているように見えるのに、なぜか結果をどんどん出していく人もいます。その違いの1つは、「脳内トーク」にあります。
仕事でうまくいく人ほど、こう「脳内トーク」します。
「この中で、最も重要なものは、どれだろう?」
この「脳内トーク」には、人によっていろいろなバージョンがあります。
「仕事で、最も大切なものはなんだろう?」
「何を提供すれば、いちばん喜んでくれるんだろう?」
「どの作業を最初に行うと、全体の業務の流れがよくなるんだろう?」
こう問いかけることで、脳は優先すべきものを探します。そして、いちばん優先すべきもの(いちばん大切な要素)に気づければ、どんどん効率化ができて、仕事が速く進められたりするでしょう。私はこれを「優先順位の脳内トーク」と呼んでいます。
この本の冒頭で、マーク・ザッカーバーグが「今、僕は自分にできるいちばん大切なことをやっているだろうか?」と自分に問いかけていると触れましたが、まさにこれも優先順位の視点を用いているのです。
まとめる視点
皆さんは、一度にいろんな話を持ちかけられて、自分の考えがまとまらないことってないでしょうか。
ここでは、私の知人で幼稚園を経営している人の話を例に挙げてみます。
彼女は、こんな悩みを打ち明けてくれました。
「今、本を読む子どもたちが減っていて、園でも読み聞かせに苦労しています。しかも、最近の子は親に叱られることが少なく、自己中心的な子が増えて困っています。コロナ以降、保護者からの園へのクレームも増えましたし、最近は先生も、すぐ辞めてしまいます。愛情よりも義務感で子どもに接する先生まで……。私も、これまで長年やってきましたが、こんなことは初めてです。どうすればいいでしょうか?」
こんなとき、あなただったら、どう答えるでしょうか?
話を聞くだけで考え込んでしまいそうですが、この話には大きく5つの要素が含まれています。
① 子どもが本を読まなくなっている
② 自己中心的な子が増えている
③ 保護者からのクレームが増えて困っている
④ 先生がすぐに辞めてしまう
⑤ 愛情よりも義務感で仕事をする先生がいる
それぞれを解決する方法を1つずつ考えることもできますが、私は今回の相談には「ある1つの大きな課題」が潜ひそんでいることに気づきました。
それは、「大人が教育不足に陥っている」という事実です。
なぜ、こんな答えが出てきたかというと、こんなふうに「脳内トーク」したからです。
「これらの問題を、ひと言で表現するとしたら、なんだろう?」
近年、どこでも都市化が進んで、ご近所づき合いを含めた、人とのつながりが薄くなったことで、子育ての悩みを共有したり、子育てで大切なことを教えてくれる周りの存在がなくなってしまったのではないか。その結果、私たち大人がほとんど大切なことを知らないまま、子どもと向き合っていることに気づいたのです。
そこで、解決法として、従来の子どもの教育だけではなく、幼稚園を新しく「大人の教育をする場」にもしていきませんか、という提案をしました。保護者向けには「脳科学で子育てが楽しくなる講演会」、先生向けには「最新のストレスケアと子育て法」を、毎月動画配信する新しいサービスを提供しました。
その結果、先生に自信がついて離職しなくなり、それによって保護者も安心感を得ることができました。
話の中にいろいろな要素が含まれているとき、1つずつすべて考えようとすると混乱してしまうことがあります。そんなときは、この「まとめる脳内トーク」が役に立ちますので、ぜひ使ってみてください。
評価の視点
物事の問題点をあぶり出すために有効な「脳内トーク」があります。やり方はこうです。
「点数をつけるとしたら、何点だろう?」
たとえば、「現在の企画内容を評価するとしたら、何点だろう?」と使ったりします。
もし10点満点で「10点」であれば、現在の企画には何も問題はありません。自分にとってはこれ以上ない、満足できる出来ばえの可能性が高いです。
しかし、もし点数が「9点」「8点」「7点」……「3点」であれば、それはその企画になんらかの課題があるはずです。
私も、企画を考えるときは、必ず10点満点で自己評価します。本を書くときも、企業で研修をしたり、メールを書くときも、講演会の内容を考えるときもそうです。
世に出す前に、必ず点数化して現状を把握するようにしています。満点でないときは、まだそこに足りない部分が存在するからです。
この方法のよいところは、10点でなかったとき、10点になるためには何が必要なのかが、自然とわかることです。
たとえば、自分がプレゼンする企画を点数化したら、10点満点で「4点」だったとします。すると、脳が満点にするために、どんなことが必要かを考えはじめるのです。
10点にするために、具体的にこんな方法が浮かぶかもしれません。
「相手がイメージしやすいように、5分間の動画を入れる」
「顧客の悩みを取り上げて、共感度を高める」
「シーンにあった選曲をして、会場を盛り上げる」
こうした要素を追加して工夫していくと、企画はどんどんよいものに変わっていくでしょう。
「企画をよくするために、どうすればいいだろう?」と自分に問いかけることもできますが、脳は曖昧な問いかけをすると、曖昧な答えが出てきやすい傾向があります。
そんなときは、ぜひ「点数をつけるとしたら、何点だろう?」と「脳内トーク」することで、脳が具体的に考えやすい状態にしてみてください。
集団バイアスを壊す視点
あなたは、「集団バイアス」という言葉を聞いたことがあるでしょうか。別名「グループシンク」とも呼ばれ、人は多数集まると、自分の意見を無意識に変更してしまうことを指します。
米国マサチューセッツ工科大学の研究では、リスクを好む人が保守的な人たちと一緒にいると、保守的な考え方になってしまうことが報告されています(逆もしかりだそうです)。
会議でも、よいアイデアが出ないことがありますが、これは複数の人が集まった結果、集団バイアスによって意見が歪められて、正しい答えが出にくいからと言われています。
インターネットの記事を見て、最初は「ウソだろう?」と思うような情報を見つけても、同じ内容の記事がたくさんあると、「本当にそうなのかも?」と思ってしまうことがありますが、これも同じ現象です。
つまり、私たちは気づかないところで、バイアスの影響を受けて正しい判断ができなくなってしまうときがあるのです。
そんなときは、こう「脳内トーク」してみてください。
「それは、絶対に本当だと言えるだろうか?」
たとえば、以前はアジアの音楽アーティストは欧米ではヒットしないというのが常識とされていました。
しかし、今では韓国のアーティストたちが音楽チャートのビルボードの常連になっていたり、世界を席巻するほどの大ブームとなっています。
IBMの創立者の1人でもあるトーマス・ワトソンは、1943年にコンピューターが開発されたとき、「全世界で5台くらいしか売れないだろう」と語っていたそうです。でも、今では全世界に普及しています。
多くの人の意見を「常識」ということがありますが、常識はいつでも覆されてきたという歴史があります。
うまくいく人たちほど、多くの人が信じていることと真逆のことをすることがありますが、まさにそれが「それは絶対に本当なのか?」という「脳内トーク」から生まれているのかもしれません。
常に、常識を疑う心を大切にしたいものです。
☆ ☆ ☆
いかがでしたでしょうか? 成功者と呼ばれる人たちは、「脳内トーク」を意識的に活用しています。「脳内トーク」を使って、脳をよい意味で騙し、自分の常識(思い込み)を打ち破る。そして、視点を増やす 。成功者たちの多くが、 「脳内トーク」を活用して、自分を変えてきた人たちなのです。
「人生を変えるためには、大きなことをしなければならない」 、多くの人がそんな常識を信じています。しかし、研究からわかったことは、私たちは大きなことをする必要はないということでした。日々の小さなことが、物事のとらえ方や行動をはじめ、能力や性格、さらには健康、習慣、パフォーマンスにまで影響を与えるということです。そして、そのベースになるのが、 「脳内トーク」なのです。
自分を変化させて、なりたい自分に近づいていくためのより詳しいヒントは「世界一やさしい自分を変える方法」をチェックしてみてください。
「世界一やさしい自分を変える方法」
著者/西 剛志
発行/株式会社アスコム
著者/西 剛志(にし・たけゆき)
東京工業大学大学院生命情報専攻卒。博士号を取得後、特許庁を経て、2008年にうまくいく人とそうでない人の違いを研究する会社を設立。世界的に成功している人たちの脳科学的なノウハウや、才能を引き出す方法を提供するサービスを展開し、企業から教育者、高齢者、主婦など含めてこれまで1万人以上に講演会を提供。エビデンスに基づいた研修、商品開発サービスなども全国に展開。テレビやメディアなどにも多数出演。著書シリーズは海外でも出版され「80歳でも脳が老化しない人がやっていること」(アスコム)をはじめとして累計22万部を突破。
脳科学者 西剛志公式サイト
https://nishi-takeyuki.com