経験は必ず人生の糧になる
――高齢になっても自分がIT業界で働けるかどうか、不安を感じる中、若宮先生の姿には勇気をもらえます。
若宮先生 AIの時代に要求されるスキルは、今のスキルとはまるっきり違ったものになると思います。時代はものすごいスピードで変化しています。どういう時代がきてもやっていけるように、柔軟でしたたかな発想ができる人間が必要になるのでしょう。いわゆる「学校秀才」がまず落伍するのではないでしょうか。
社会も世の中も先端技術もどんどん変わっていくでしょう。1回目の職業が看護師で、2回目がシステムエンジニアで、次が板前さんになるとか、そういう生き方があってもいいじゃないですか。せっかく人生100年与えられているんだから、いろいろ経験すればいい。過去の経験がのちに生きてきますし、決して無駄にはならないんです。
私も「81歳にもなってよくプログラミングやろうと思いましたね」とか言われますけど、プログラミングはパソコン1台あればできますし、無料のソフトだってあるんです。
くさやの干物を焼いているわけではないので、隣近所にも迷惑にはなりません。なのに、なんで勇気と決断が必要なの?うまくいかなかったらいつでもやめられるのに、やる前からどうしてそんなに臆病になるのかな?
野球だってせいぜい2割5分打てば上々でしょう。とにかく打席に立てば良いのではと思うのです。打席に立たなきゃどんな球だって当たらないですからね。
――ありがとうございました。
「とりあえず、やってみよう」「うまくいかなくても、いいじゃない?」という若宮さんの言葉は、多くの人の心を捉えて離さない。88歳の今も「発展途上」という若宮さんから目が離せない。
若宮正子先生
1935年東京生まれ。東京教育大学附属高等学校(現・筑波大学附属高等学校)卒業後、三菱銀行に入社。58歳頃に好奇心でパソコンを買う。エクセルと手芸を融合した「エクセルアート」創始者。2016年にはアプリの開発を始め、17年に米国アップルによる世界開発者会議「WWDC 2017」に特別招待される。デジタルクリエーター、ICTエバンジェリストとして世界的に活躍中。シニア向けサイト一般社団法人「メロウ倶楽部」理事。NPO法人ブロードバンドスクール協会理事。熱中小学校教諭。
文/柿川鮎子