事故情報の分析結果
感電死傷事故の過年度推移
上記のグラフは国の自家用電気工作物における感電死傷事故件数の過年度推移を示したものだ(図 3)。感電死傷事故件数は減少傾向にあるが、近年下げ止まりの傾向が続いている。
感電死傷事故の発生状況(夏場の事故の発生状況)
全国の自家用電気工作物における感電死傷事故は、2019年度から2021年度の3年間で133 件(死亡14件、負傷119件)報告されている。
発生月別に見ると、6月から感電死傷事故が増加をはじめ、7月に最多となり、11月頃まで高い発生傾向が続く。また、6月~9月の夏場においては、死亡事故も多く発生している。(図 4、図 5)。
夏場に感電死傷事故が増加する理由としては、(1)暑さのため、軽装などで肌を露出する機会が増えること、(2)集中力の低下により、人為的ミスが発生しやすくなることや、 (3)高温・多湿の環境下での作業のため、作業者が発汗して人体の電気抵抗が低下し、皮膚の表面で電流が流れやすい状態になることなどが考えられている。
そのため、感電死傷事故は夏場の電気設備において、起こりやすい傾向にあると言える。 また、作業者の感電被害は、高圧の受変電設備における「電気工作物の点検」作業中の被害が最多であり、次いで、「電気工事」、「電気工作物の修理」作業中の被害が多くな っている(図 6)。
感電死傷事故の被害状況(高齢者の事故の発生状況)
2019年度から2021年度に発生した感電死傷事故133件の年齢別の死傷者数・事故率( ※1)の分布を示す(図 7)。
この分析結果より、60歳代・70歳代以上の高齢作業者における事故率が高いことが明らかとなった。また、20歳代の事故率も高くなっているが、他の年代の作業者と比較して、現場での実務経験が浅いことなどが影響してい ると考えられる。
次に、65歳以上の高齢作業者の感電被害を見ると、発生設備では高圧の受変電設備(キュービクルなど)に集中しており、作業内容では通電中の「電気工作物の点検」作業時の感電死傷事故(17 件、うち16件が高圧以上)が高い割合を占めていることがわかる(図 8、図 9)。
「電気工作物の点検」には、例えば、漏洩電流の測定中に誤って他の充電部に接触してしまったなどの事例が挙げられる。
事故発生原因としては、「被害者(作業者)の過失」が最多(8件)であり、次いで、「作業方法不良」、「作業準備不良」、「工具・防具不良」となっている。
具体的には、作業中の不注意(作業手順の確認不足、検電の未実施など)、作業手順違反(絶縁用保護具の未着用、充電部に身を乗り出して測定作業を行なったなど)、身体的異常(作業中のふらつき、よろけなど)などが挙げられる(図10)。
高齢作業者には通電中の「電気工作物の点検」作業時の感電リスクが高いことに十分注意が必要だ。
詳報公表システムについて
詳報公表システムは、電気事業法に基づく電気工作物に関する全国の事故情報(詳報)が一元化された国内初のデータベース。2020年度からの事故情報について順次公開が行なわれている。本システムは、電気事業者をはじめ、誰でも自由に使える。事故情報を条件やキーワードで簡単に検索することができ、抽出されたデータはCSVファイルとしてダウンロードすることも可能だ。
詳報公表システム/https://www.nite.go.jp/gcet/tso/kohyo.html
関連情報
https://www.nite.go.jp/gcet/tso/index.html
構成/清水眞希